昨今のサービス業界では、慢性的な人手不足が叫ばれています。人手不足となってしまう要因は離職率の高さといわれており、厚生労働省が調査した雇用動向の結果を見てみても、サービス業の離職率が群を抜いて高く、20%を超えている業種もあります。
出典:平成30年雇用動向調査結果の概要
離職による人手不足に備えるため、サービス業界、特に多店舗ビジネスでは常に従業員の採用募集をしています。学生アルバイトも貴重な人材であり、長く働いてもらうために手厚フォローをしたいと思っていますが、現場ではそれができない現状があります。
本記事では、多店舗ビジネスにおけるOJTの現状と効率化のポイントについて、事例を交えてご紹介いたします。なお、本記事での多店舗ビジネスとは、飲食業や小売業など接客を伴うサービス業のことを指すものとします。
目次
- 多店舗ビジネスにおけるOJTの基本的な仕組み
- なぜOJTが教育担当者の負担になっているのか
- OJTがおろそかになると起こりうる課題
- OJT効率化のポイントと事例
- まとめ
多店舗ビジネスにおけるOJTの基本的な仕組み
まずは、多店舗ビジネスにおけるOJTの基本的な仕組みを整理します。「多店舗」とあるように、全国各地に店舗を構える企業では、各店舗のアルバイト採用を本社が管轄せず、店舗の裁量に任せている所がほとんどです。私も学生時代にレストランやカフェのアルバイトに応募したことがありますが、採用担当は店長やエリアマネージャーで、その場で採用が決定することもありました。
採用決定後は、雇用契約や時給についての説明を受け、業務に入ります。飲食店のホールであればオーダーの取り方、小売店であれば売り場の配置を覚えて在庫補充など、比較的簡単な業務から覚えていきます。マンツーマンで教えてもらい、流れが把握出来たら、教育担当者が側につきつつ一人で実践します。言葉遣いや表情など、細かな部分のフィードバックを繰り返し、だいたい3か月程度で一連の業務が一人でもできるようになっていきます。
なぜOJTが教育担当者の負担になっているのか
上記のようなOJTは、店舗で長く働いているベテランアルバイトや社員が教えることが一般的ですが、人手不足の中、教育担当者もまた、手足を動かし業務をおこなわなくてはなりません。前述したように、新人アルバイトには手厚くOJTをして長く働いてもらいたいと思っていても、教育担当者のちょっとした空き時間にしか教えられなかったり、忙しそうな様子から新人アルバイトが質問できず、わからないことがいつまでも解消されないためモチベーションが下がってしまいます。
教育担当者がOJTできない場合は店長が直接おこなうこともありますが、店長業務は営業管理、シフト調整、採用管理など多岐に渡ります。教育担当者以上に教える時間が取れないこともあるでしょう。
OJTがおろそかになると起こりうる課題
教育担当者からも店長からも十分に仕事が教えてもらえなかった時、新人アルバイトが感じることは「放置されている」「なかなか仕事が覚えられない」「つまらない」といったネガティブな気持ちばかりです。一般的に採用されてから業務ができるようになる約3か月までの間に、ポジティブな気持ちに切り替わらなかった時に起こるのが早期離職です。
また、一人で十分にできるようになっていない状態でフロアに立つことになってしまった場合、お客様からの質問に答えられなかったり、間違った回答をしてしまうなどのトラブルも起こりえます。こうしたトラブルは新人アルバイトにとっても苦い経験となり、仕事を続けていく自信がなくなってしまう可能性が高いのです。
新人アルバイトが早期離職してしまうことは、店長や教育担当者は全く望んでいません。前述した通り、従業員が離職により減ってしまった場合は採用して補充していきます。また一から業務を教えるOJTサイクルが回っていきますが、教育担当者も店長も忙しく教える時間が取れない、という状況が変わらない限り、この負のループが止まることはありません。採用した新人アルバイトに十分なOJTをおこない、離職せず長く働いてもらうためにできることはないのでしょうか?
OJT効率化のポイントと事例
OJTが十分に行えない理由は、教育担当者や店長が教える時間を捻出できないことが一番の原因ですが、時間を作ることは現実的に難しいでしょう。そこで考えられる改善方法が、OJTの効率化です。
OJTの効率化とは、店長や教育担当者が時間をかけるべきポイントを絞り、必要な時にだけ対面でトレーニングを行うということになります。基本的な業務は新人アルバイトが自分で学べる仕組みを構築することで、OJTの効率化が実現できます。
店長や教育担当者は、新人アルバイトが入るたびに、同じような業務の説明をしているのではないでしょうか?教えることが型化されているものは、コンテンツ化することができます。
ここで事例をご紹介します。神奈川県で大型フィットネスクラブを運営している人の森株式会社では、ジムトレーナーの育成に非常に時間がかかっており、教育担当者の残業時間が80時間を超えてしまう月もありました。
主に時間がかかっていたトレーニングマシンの使い方や効果の説明を動画としてコンテンツ化し置き換えたところ、残業時間が70%削減されました。
詳細な事例は下記URLからもご確認いただけます。
OJT効率化で残業時間70%削減 事例詳細
コンテンツ化としておすすめなのは、動画やPDFです。それぞれにマッチしている内容例は下記になります。
【動画化がおすすめ】
動きや発声を伴う業務
(例)オーダーの取り方、お客様のご案内方法、レジ業務の流れ、電話対応など
【PDF化がおすすめ】
動きや発声を伴わない、事務手続きなど
(例)就業規則、給与説明、フロアの配置や物の置き場所説明など
一方で、コンテンツ化できないこともあります。それは実践チェックとフィードバックです。前述した「店長や教育担当者が時間をかけるべきポイント」がここになります。
実践してできるところやフィードバックポイントは人によって違うため、対面で行いましょう。うまく出来なかったポイントはコンテンツで復習することができるため、基本的に店長や教育担当者はチェックの時間だけでOJTが進むようになります。
OJTの効率化は、新人アルバイトにとってもメリットがあります。わからないことがあったとき、新しく業務を覚えたいとき、店長や教育担当者が落ち着いている時間を見計らって声をかける必要がなく、自分の好きなタイミングで学習することができるようになります。早期離職の原因となるネガティブな気持ちを払拭することができるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。OJT効率化に向けては、まずは現状のOJTフローを振り返り、毎回同じ説明をしている項目を洗い出してみましょう。それらの項目はコンテンツ化できる可能性があります。
次に、動画かPDFか振り分けをしてみましょう。PDF化の方がハードルが低いので、まずはこちらから進めてみるのもおすすめです。動画化は時間やコストがかかりますが、一度作ってしまえば長く使うことができるコンテンツです。教えるのに時間がかかる業務から動画化していくなど、優先順位をつけて作成してもよいでしょう。
弊社が提供する人材育成クラウドサービス「shouin」では、上記のようなコンテンツ作成のサポートをおこなっています。動画、PDFの閲覧に加え、一問一答式のクイズや、できるようになったことにチェックをつけていく機能も搭載しており、業務理解をさらに促進する仕組みを構築できます。ご興味をお持ちいただけましたら、まずはご相談からでもお問い合わせください。
