業務効率化とは?生産性向上につながる具体的な手法・ツールや注意点をわかりやすく解説!
現在、業務効率化は多くの企業が進めるべき課題とされています。テレワーク・リモートワークへのシフトや働き方改革によって、業務を効率化しながら成果を出すことがますます求められるようになりました。
しかし、業務効率化の進め方は多種多様であり、何から手を付けて良いのかわからない企業も多いはずです。そこで本記事では、業務効率化に取り組む際に理解しておきたいポイント、進め方、具体的な手法などについて詳しく解説していきます。
業務効率化とは
業務効率化とは、業務中に生じている「ムリ」、「ムダ」、「ムラ」の3つを見つけ出し、改善することを言います。具体的には、次のような状態になっていないか検証し、改善します。
- 従業員の負担が大きすぎないか(ムリ)
- 業務に投入する費用や時間が大きすぎないか(ムダ)
- 人や部署、時期によってアウトプットに偏りが生じていないか(ムラ)
これらを様々な方法で解消することで、業務の効率化が期待できるのです。
業務効率化が求められる背景
「業務効率化」が求められる背景には、日本全体が直面している労働力不足があります。日本は急激に少子高齢化が進行しており、労働人口の減少により企業でも従業員の確保が難しくなっています。これにより、限られたリソースで最大限のアウトプットを生むことがますます求められるようになりました。
同時に、近年の働き方改革の動向も業務効率化の推進を後押ししています。36協定に関する法改正などからも、これから企業は規定の時間内に業務を終わらせる環境づくりが求められるのです。
さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大により、テレワークを導入する企業も増えました。従業員同士が遠隔でコミュニケーションを取りながら生産性を向上させる体制が必要になっています。
業務を効率化するメリット
業務を効率化することで、企業は次のようなメリットを得ることができます。
メリット1:コストを削減できる
業務中に生じている「ムリ」、「ムダ」、「ムラ」をなくすことで、これまでより短い時間で仕事を終わらせることができるようになります。これにより、費用や時間など、仕事に投入するコストを削減できます。
例えば、ムダな仕事を省くことで、従業員の残業時間を減らすことができるでしょう。これにより、企業は月々の残業代を抑えることもでき、時間・費用といったコストを削減できます。
メリット2:働き方改革ができる
業務効率化を進めることで、従業員が働きやすい環境を整えることができるようになります。労働時間の短縮や非効率な働き方の是正は、従業員のモチベーションの向上にも繋がります。
モチベーションの向上はさらに仕事の効率性を向上させると考えられるため、ポジティブな循環を作り出すことが可能です。
メリット3:新しい分野にチャレンジできる
業務効率化によって時間や費用といったコストを削減できれば、余力を新たな事業に充てることができるでしょう。これまで人手や費用の面で制限されていたり、後回しにされていた業務に着手することができれば、組織体制の強化が期待できます。
業務効率化のための4ステップ
業務効率化を実現するには、大きく分けて次の4つのステップがあると考えられます。
- 業務整理
- 標準化
- 共有化
- 効率化
多くの企業では効率化のためにすぐにシステム導入をしてしまいますが、実は業務整理や標準化ができていないと思うように効率化は進みません。
1.業務整理
業務整理は既存の業務を把握し、業務フローを見直すステップです。職場が現在の業務においてどのような課題を持っているか明確化しましょう。
例えば、次のような課題が考えられます。
- 紙での業務が多い
- 経理に無駄が多く人手が足りない
- 契約書などの書類はすべてExcelを使っている
- 外出が多いためスムーズな情報共有が難しい
業務整理のスタートは現状の業務フローを丁寧にヒアリングすることです。現場のヒアリングから得た情報を整理し、タスクごとに見える化された対象業務のフロー図を作成しましょう。
2.標準化
標準化は業務の属人性を排除し、同じフローや方法に統一することを言います。業務整理により課題を抱えた業務が見つかったら、それらのフローや担当者の業務処理方法が標準化できているか確認しましょう。
「人の数だけルールがある」という方法論はITツールの導入の妨げになるため、標準化は重要なプロセスと言えます。
3.共有化
業務の標準化ができたら、業務処理のルールを社内に周知し、共有することが求められます。
仕事の進め方に関する認識が共有化されていることで、属人性から脱却し、アウトプットをより客観的に評価できるようになります。
ITツールのベンダーや専門家のサポートなしでITツールの導入を行った場合、業務の共有化が行われる前にいきなりシステムの導入に入ってしまう企業が多く見受けられます。
しかし、いくら便利なシステムが導入されても仕事が標準化、共有化されていなければ属人的な業務は続いてしまい、思ったように業務効率化は進みません。
4.効率化
業務の標準化や共有化が終わったら、いよいよシステムを導入して効率化を図ります。
システムの導入を成功させるためには、職場が「ありたい姿」を思い描けているかが重要になります。
「ありたい姿」とは、「こんな風にできればいい」というビジョンのことです。
例えば、「紙の仕事が多く契約書などはExcelで管理している」という課題を持っているなら、「経理部門を中心にバックオフィスの問題点を改善したい」というビジョンを思い描けるでしょう。
現場で働く従業員が「システムを使えばどのようにありたい姿になれるか」を理解することが大切です。
業務効率化するための5つの手法
業務効率化をするためには次の5つの方法が考えられます。まずは自社内でできる方法から検討してみましょう。
必要のない業務を削減する
必要のない業務を削減することは、業務効率化の最も基本的な方法であり、費用がかからないことがメリットです。
例えば、高頻度で行われるムダな会議を削減することで、削減した時間だけ従業員が自分の業務に時間を割くことが可能になります。
また、会議や上司の説明のために作成される資料や活用されづらい紙マニュアルもムダの温床になっていることがあります。社内の資料は「わかれば良い」「体裁にこだわりすぎない」など、当たり前となっている慣習を見直してみると良いでしょう。マニュアル作成に関しては以下の記事が参考になります。テンプレートもご用意しておりますので、ぜひご活用ください。
■参考記事はこちら
【パワポで作成】わかりやすいマニュアルの作り方(無料テンプレート付き)
業務フローを見直す
業務が非効率な場合、業務フローそのものに欠陥があるかもしれません。経験豊富な従業員が属人的に仕事を進めている場合は、若手や他の従業員に知識や経験が共有されず、非効率な体制となります。
業務フローの改善には、業務ルールをマニュアル化することで対応可能です。マニュアルは読み手が業務を理解するために作成するため、全く知識のない新入社員が読んでも理解できるようにしておくことが大切です。
そのため、マニュアルは知識だけを羅列するのではなく、読み手が理解しやすい文面や図、表も併用しながら、短時間で全体像を把握できるようにしておきましょう。
また、マニュアルは特に新入社員が読み手となることが多いため、若い世代が手軽に読めるシステムや機材の導入を検討すると良いでしょう。マニュアルは機材の導入時に作成し始めるのではなく、導入してすぐに確認できるようにあらかじめ準備しておきましょう。
業務をまとめる、分ける
業務効率化には「まとめる」「分ける」といった作業が必要です。
例えば、少人数のチームで仕事を集約した方が良い場合は、これまでの仕事をまとめることで効率化を図りましょう。
反対に、一部の従業員や部署に仕事が集中している場合は、「ムラ」が生じている状態になります。この場合は、できる限り部署内や関連部署間で仕事をシェアすることで、「ムラ」を解消することができます。
また、「分ける」は単なる業務負担の分散というだけでなく、工程を分けることも意味します。仕事は必ずしもはじめからおわりまで1つの部署、1つの従業員が行う必要はありません。工程によっては分業体制とし、得意な部署や従業員に仕事を再配分することが重要です。
業務を自動化する
業務の中には必ずしも人手をかけてやる必要のないルーティン業務があります。特に、単純かつ手間のかかる作業については、人よりツールの方が処理が得意かもしれません。
各ITツールによる業務効率化は、「まずやってみる」ことが重要です。ITツールのホームページにはたいてい導入事例がありますが、「どう使うか」「できないこと」などは使って見ないとわかりません。一度使ってみて微妙な結果に終わったとしても、そのプロセスはムダではありません。
また、適切なITツールの導入を実現するには、「何を使わないか」も重要です。余計なツールを使っているなら使用を止めてみるなど、効率的な環境を整えることも忘れないようにしましょう。
外部の専門家を活用する
ITを活用して業務効率化を図る際には、専門家を活用することも検討しましょう。ITツールは、IT企業でもその専門分野によっては、外部の専門家に依頼した方が良いケースがあります。
寿司のケータリングを肉屋に頼む人はいないと思いますが、ITではそんなことが普通に起きています。[…]外部の専門家と自社の人材のアイデアの掛け合わせが価値を生むこともあるため、自社に特定分野のITの専門家がいたとしても、触媒として専門家を登用する価値はあると感じます。
【参照元(クロスメディア・パブリッシング):売上が上がるバックオフィス最適化マップ】
もし自社がIT企業であっても、ITツールの導入や活用に詳しい人材が揃っているとは限りません。社内の人材では不安を感じる場合、積極的に外部の専門家を活用しましょう。
ペーパーレス化を行う
ペーパーレス化は社内の業務効率化に大きく貢献します。例えば、契約書や関連資料のプリント、製本、相手先への送付など、紙ならではの手間を大幅に削減することで業務効率化を図ることが可能です。
また、テレワークを導入している企業では電子データでのやり取りが主になります。ペーパーレス化を進めて資料を電子化しておけば、わざわざ資料の確認のために出社するという非効率な働き方も改善できます。ペーパーレス化については、以下の記事が参考になります。
■参考記事はこちら
ペーパーレスとは?コロナ禍で進めるメリットや実現方法をわかりやすく解説!
業務効率化するときの注意点5つ
業務効率化を進める際には、次の5つに注意しましょう。業務効率化は社内のコンセンサスや体制づくり、ツール選びなどが必要不可欠です。
注意点1. 現場を把握していない人が、業務設計を行ってしまう
現場について知識や経験に乏しい人が業務設計を行ってしまうと、業務の実態を無視した業務効率化が進められることになり、かえって従業員の混乱を招くことになります。業務設計をする際には現場経験のある人に任せたり、そのような方にアドバイスをもらったりすることが必要です。
また、業務改善は経営層主導で行われることもありますが、実際に業務に従事している従業員にヒアリングするなどし、生の声を吸い上げることも大切です。
注意点2. 効率化を重視しすぎるあまり、品質が下がってしまう
効率化と品質管理は必ずしも相反するものではありませんが、過度な効率化の追及により、自社の商品やサービスの品質が低下してしまう懸念もあります。
例えば、接客を伴う店舗運営の場合、従業員の効率的な配置と称してスタッフの接客時間や人員を減らしすぎると、顧客の不満やクレームにつながってしまうことがあります。
効率化は可能な範囲で、現状のサービスや商品の品質を維持できる範囲で行うことが基本です。
注意点3. 目的や目標が共有されておらず、手段が目的化する
業務効率化は、それ自体が自己目的化してしまう恐れがあります。業務効率化はあくまで手段であり、目的はコストの削減や働き方改革の実現である点はおさえておきましょう。
特に、ITツールの導入は自己目的化しやすいポイントです。業務効率化の旗振り役は、全体の業務フローを可視化する「情報編集力」を持っている必要があります。
例えば、紙やデータの情報、お金の流れなどをフローを可視化できれば、「これがシステム化されたら現場はどう変わるだろう」といった推測もしやすくなり、ITツールの導入だけがゴールになってしまう事態は避けられます。
注意点4. 効率化されたかの検証が行われない
業務効率化は検証することではじめて真価を発揮します。なぜなら、実際に検証を行わない限り、従来の業務から何がどのように改善したのか(あるいはしていないのか)わからないからです。
これからの時代は、効果を検証し、その結果に基づいて業務体制を「いつでも変えられる仕組みになっているか」が重要になってきます。そのためには、やはりITツールの活用が効果的です。
IT活用の真の効果とは、会社の箱を可変式にして、時代の変化や技術の進化に対応できるようにすることである───。
【参照元(クロスメディア・パブリッシング):売上が上がるバックオフィス最適化マップ】
IT活用は単に社内の業務を局所的に効率化するだけではなく、時代に合わせて柔軟に業務体制を変化させる役割も担っているのです。そのままの会社の体制では社会の要請に対応しきれなくても、ITシステムを組み合わせることで懐を深くし、未来の可能性を広げることができるのです。
注意点5. 導入したツールが使いにくくて定着しない
業務効率化のためには、グループウェアやコミュニケーションツール、タスク管理ツールなど様々なツールを導入することもあるでしょう。
しかし、せっかくツールを導入しても、社内に使い方が周知されていなかったり、特定の部署しかツールを使っていなかったりする場合、その効果は限定的になってしまいます。
また、ツールが使いにくい、使い方がわからないという声があれば、随時講座を開くなどして周知する必要があります。
店舗の業務を効率化するツールや具体的な手法
最後に、売上が上がるバックオフィス最適化マップ(クロスメディア・パブリッシング)を参考に、店舗の業務を効率化するツールや具体的な手法についてご紹介します。みなさんの店舗運営に役立ててみてください。
1.勤怠管理システムによる効率化
勤怠管理の方法は、次の4つに分けられます。
- 何もしていない状況
- 出勤簿に手書きまたは押印して管理
- タイムカード打刻
- 勤怠管理システムを利用したICカード等による打刻
このうち、客観的な記録を残し、従業員の労働時間を正確に管理するには、タイムカードか勤怠管理システムによる管理をする必要があります。
【参照元(クロスメディア・パブリッシング):売上が上がるバックオフィス最適化マップ】
従業員の労働時間を正確に把握することで、働きすぎや業務負担の偏りなど「ムダ」や「ムラ」を確認できるようになります。
ただし、タイムカードでは集計に膨大な時間がかかるほか、不正打刻や給与計算時の転記ミスなどの温床になります。
勤怠管理そのものを効率化するためにも、勤怠管理システムの導入は検討の余地があるでしょう。
2.経費精算システムによる効率化
経費精算は経理部門において大きな負担のかかる業務と言えます。担当者が手作業で金額や費目をExcelに入力している場合、膨大な時間がかかるほか、転記ミスのリスクも発生します。経費清算でミスが生じた場合、後から追加での支払い対応をしなければならないなど、何かと手間がかかります。
経費精算システムであれば、領収書やレシートなどをスキャンし自動で費目や金額を転記してくれる機能があります。
例えば、40人の会社で経費精算システムを導入し、1人あたりの作業を20分短縮できるようになったとします。その場合、月に約13時間の節約となり、時給3,000円の従業員を想定すると約4万円の節約となります。経費精算システムは1人あたり付き500円程度なので、導入費用が2万円なら月2万円は得をしていることになります。
【参照元(クロスメディア・パブリッシング):売上が上がるバックオフィス最適化マップ】
3.グループウェアの導入
グループウェアは、チャットやウェブ会議、スケジュール管理、クラウドサーバーなど、企業内のさまざまな業務効率をアップする機能を持つツールです。
中でもコミュニケーションについての機能が高頻度に使われ、やり取りのスピードアップを図ることができます。SlackやZoomなどのように用途ごとにツールを使い分けることもできますが、G Suiteのようにすべての機能をひとつでまかなうことも可能です。
4.テレワークの導入
従業員の働き方改革は通勤のストレスを減らすことでも実現できます。テレワークであれば通勤の必要がないため、従業員のワークライフバランス実現に貢献できるでしょう。
また、テレワーク環境では急に話しかけられたり、朝礼や夕礼に出席したりする必要がないことから、従業員が自分の仕事に集中することができるようになります。
ただし、テレワーク中は業務連絡など従業員とのコミュニケーションに課題を感じる企業も多いため、コミュニケーションツールの導入も進める必要があるでしょう。
5.研修のオンライン化
コロナ禍になってから、オンライン研修を実施する企業も増えてきました。オンライン研修は時間と場所を問わずに参加できるため従業員の業務時間を奪うことはありません。
また、オンライン研修は継続的に学習する場所としても適しています。例えば、eラーニング形式で業務内容を自主的にインプットしてもらい、同じ時間に集まって実施するオンライン研修では学習内容をアウトプットするなど、「反転学習」を行うこともできます。
特に新入社員の研修などでは、オンライン研修を導入し学習効率を高めることで、人材育成を効率化することができます。オンライン研修については、以下の記事が参考になります。
■参考記事はこちら
オンライン研修とは?質が上がらない原因やメリット・デメリットをわかりやすく解説!
まとめ
業務効率化は、「ムリ」、「ムダ」、「ムラ」を洗い出し、それらを改善していくことです。業務効率化のためには仕事の見直しのほか、各種ツールの導入やテレワークの導入、研修の見直しなどによっても進めることができます。会社に適した方法をいくつか取り入れることで、仕事の効率が高まり、働き方改革をより一層進めることができるでしょう。