離職防止のために会社が取るべき段階別対策とは?事例を交えてわかりやすく解説!
「自分に合う仕事をやろう」「仕事が辛いなら転職しよう」といった考え方が広まり、近年、人々の間では”転職”が身近なものになってきています。故に、身軽に職を転々と変える人が増えてきており、「採用に労力を割いてもすぐに人が辞めてしまう…」と悩む企業が少なくありません。
そこで今回は、離職防止のために会社がとるべき対策について解説します。
離職率が高くなる原因や、防止対策の具体的な事例などもご紹介しますので、人材定着にお悩みの方はぜひ最後までご覧ください。
厚生労働省の調査に基づく離職率の現状とは?
離職に関する記事、人材定着に関する資料などでよく目にする「離職率」。離職防止対策について知る前に、まずは離職率とは何か改めて確認しておきましょう。
離職率とは、「ある一定期間を経て、どれほどの従業員が離職したか」を示す割合。企業の働きやすさを表す指標として、さまざまなシーンで活用されている数値です。離職率は、以下の式で算出することができます。
ある一定期間において…
離職率(%)=期間後の従業員数/期間開始時の従業員数×100(%)
離職率が低い状態は、離職者が少ないことを表します。働きやすい企業として良いイメージを持ってもらえるため、採用時などに活用することができます。反対に離職率の高い状態は、「長く働き続けたい」と思える職場環境・労働条件が整っておらず、離職者が多いということ。離職率を下げるには、従業員にとって働きやすい環境を作る必要があるのです。
さて、現在日本の企業における離職率は、どのような状況にあるのでしょうか。厚生労働省による「令和2年雇用動向調査結果の概況」をもとに見ていきましょう。
(引用元:厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概況」)
当データによると、2020年時点の離職率は14.2%、2009年の最も高い離職率16.4%と比べると2.2%低い状況にあります。14年間で上がったり、下がったりを繰り返しながらも、徐々に下がりつつあるようです。
ここで注目すべきなのが、大きく離職率が跳ね上がった2009年と2019年です。2009年は、2008年9月に起きたリーマンショック直後の年。離職の理由はさまざまなことが挙げられますが、2009年に関しては、リーマンショックによる経済状況悪化の影響を受けて上昇したと考えられます。
そして2019年は、2018年に成立された働き方改革の影響を受けた年です。長時間労働の解消やフレックス制度の導入など、多くの企業が労働環境を変化させたことで、人々の働き方に対する考え方も変わり始めた時期。その影響を受けて、「ライフスタイルと両立できる企業へ移りたい」「より待遇の良い企業へ転職したい」と離職した人が多かったと考えられます。
また、2019年は新型コロナウィルス感染症が発生した年でもあります。緊急事態宣言や、感染予防のためのテレワーク導入など、仕事と日常生活に大きな変化があった時期。そのせいで「このまま同じ会社に勤め続けて大丈夫なのか」と不安に思い、離職、転職した人が増えたと考えられます。
このように、離職率は環境の変化によって大きく変動するもの。現在は比較的落ち着いてきていますが、今後も安定し続けるとは限らないので、企業は離職を防止するための取り組みを行う必要があります。
ちなみに離職率については、下記リンクにて詳しく解説しています。より深く知りたい方は、ぜひこちらもご覧ください。
■参考記事
離職率とは?離職原因と対策方法について改善事例からわかりやすく解説!
業界別の離職率
離職率は、業界によって違いがあります。今回は、なかでも離職率が比較的低い傾向にある3つの業界と、それぞれの特徴をご紹介します。
また、先ほどの「令和2年雇用動向調査結果の概況」をもとに、業界別の平均離職率もご紹介しますので、自社との比較にぜひご活用ください。
(引用元:厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概況」)
業界1:宿泊業,飲食サービス業
ホテルや旅館、飲食店などの経営を行う「宿泊業、飲食サービス業」。2020年の離職率が26.9%と最も高く、従業員の離職に悩まされている業界です。
宿泊業・飲食サービス業は、低賃金が離職率の高さに関係していると考えられます。
「産業別月刊現金給与総額」によると、宿泊業・飲食サービス業の現金給与額は、2020年で約14万円だったとのこと。最も給与額の大きい「電気・ガス・熱供給・水道業」の半分以下と、賃金の低さが目立ちます。
収入が少なければ、日常生活を送るのが困難に。常に、お金に対する不安を抱えながら生活するのは辛いものです。さらに、お金がないと仕事のストレスを発散することさえも難しいでしょう。そのため、宿泊業・飲食サービス業においては、給与の低さが引き金となって辞めるケースが多いと考えられます。
また宿泊業・飲食サービス業は、早朝勤務や深夜勤務など、不規則な労働時間が多い仕事。体への負担が大きく、体調を崩してしまうことが多々あります。最悪の場合、病気にかかって離職せざる得なくなることも。このような労働環境が、宿泊業・飲食サービス業の離職率の高さに関係しているとも考えられます。「令和2年雇用動向調査結果の概況」を見るとわかる通り、宿泊業・飲食サービス業は入職率も離職率も両方高く、もともと人員の入れ替わりが激しい業界です。とはいえ、離職が多い環境では、採用および教育コストがかかる、人員不足になるなどデメリットが大きいので、少しでも人材が定着するよう対策をとる必要があります。
業界2:卸売業,小売業
商品を購入し、販売することで利益につなげる「卸売業、小売業」の離職率は、2020年度で13.2%。一番ではないですが、比較的離職率が高くなりやすい業界です。
スーパーマーケットやコンビニエンスストア、アパレルショップなど、卸売業や小売業は店舗型ビジネスがほとんどで、その多くがシフト制で従業員が働いています。土日休みが少なく連休も取りにくいことから、労働環境に不満を抱いて離職する人が少なくありません。
(厚生労働省「産業別月刊現金給与総額」をもとに弊社で作成)
また卸売業と小売業の平均給与額は、2020年度で下から三番目と比較的低め。店舗業務から本社幹部へと昇格するケースはほとんどなく、昇格できたとしても店長クラスです。
働き始めの頃の給与が低くても、キャリアアップが見込めるなら、働き続けようと考えるもの。しかし、卸売業と小売業はそのようなビジョンが描きにくいため、離職率が高くなりやすいと考えられます。
業界3:教育,学習支援業
幼稚園や小中学校の教師、塾講師などの職業が含まれる「教育、学習支援業」。この業界の2020年度の離職率は15.6%と、「卸売業、小売業」と比べてやや高い数値に。
教育・学習支援業は、長時間残業や人間関係の悪化などが離職率に関係していると考えられます。
塾の講師や高校・大学などの教師は、通常の授業に加え、授業の準備やその他事務業務も担う場合がほとんど。部活の顧問や特別授業も行っている教師であれば、その分勤務時間も長くなります。
また、教師や講師、指導員は人を育てる職業。生徒を守り、将来へと導く責任重大な仕事です。場合によっては、保護者からのクレーム対応に追われ、大きなストレスを抱えてしまうことも。そうして肉体的、精神的に疲弊し、離職してしまう人が多いため、離職率が高くなっていると考えられます。
教えることが好きで、やりがいを持って教育業・学習支援業に携わっているのであれば、離職は多少防ぐことができます。しかし、あまりにもストレスが大きい場合や、精神的な病に犯されてしまった場合、どんなに仕事が好きでも離職せざるを得ません。そのため学校を運営する側は、従業員のメンタルケアも視野に入れ、離職防止対策を行う必要があるのです。
さまざまな条件で離職率を比較
離職率は業界によって違うと解説しましたが、雇用形態や採用条件によっても違いがあります。「雇用形態」「最終学歴」「新卒と中途採用」の3つに絞り、それぞれの条件でどのような離職率の違いがあるのか見ていきましょう。
雇用形態によって離職率に差はある?
パートやアルバイト、契約社員、派遣社員などの非正社員と、正社員では、離職率にどのような違いがあるのでしょうか。
(引用元:厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概況」)
上記グラフを見ると、正社員と非正社員の離職率の違いは一目瞭然。例えば2020年の場合、正社員の離職率は10.7%なのに対し、非正社員の離職率は23.3%と約2倍です。正社員雇用よりもパートやアルバイトの方が、圧倒的に離職しやすいことがわかります。
また、2018年から2019年の1年間で、正社員の離職率は1%高くなったのに対し、非正社員の離職率は2.8%も高くなっています。離職率のアップダウンが激しいのも、非正社員雇用の特徴です。
非正社員は、離職率だけでなく入職率も高いことから、コロコロと職を変える人が多いことがわかります。さまざまな理由が考えられますが、パートやアルバイトは学生、主婦が多いことが挙げられるでしょう。
個人の状況によって違いはありますが、学生や主婦は、親や夫が学費・生活費を出してくれる場合が多く、稼がなくてはならないお金の額は低めです。もちろん、収入の良さは非正社員にとっても重要なことですが、正社員ほど離職期間中の生活費に対する恐怖はなく、転職のリスクは低いと考えられます。
もし、家族を養いながらパートやアルバイトで働いている場合でも、きちんと稼げるところへ移りたいと考えるはず。「働きがいがあるから」「人間関係が良いから」と残らずに、選り好みせず、きちんと家族を養えるほど収入が得られる場所へ転職するでしょう。
非正社員雇用は基本的に、正社員で補いきれない人員を確保するために行うもの。そのため、非正社員の離職率が高くなると、人員不足問題が発生します。
人員が不足すると、残された従業員の負担は大きくなり、正社員の離職も増える可能性があります。よって、企業が正社員の離職を防止するには、アルバイトやパートの離職防止対策も併せて行う必要があると言えるでしょう。
最終学歴によって差はある?
最近では、学歴に関係なく雇用する企業が増えているため、高校や短大、中学校卒業後に就職する人も多いです。学歴による離職率の違いはあるのでしょうか。
(引用元:厚生労働省(2020)「新規学卒就職者の離職状況」)
厚生労働省が行った2017年の調査によると、1・2・3年目に離職した大学卒業者の割合は32.%だったのに対し、中学卒業者の割合は59.8%。1年で離職した人の割合に関しては、中学卒は大学卒の約3倍にも及びます。高校卒業者、短大卒業者の離職率は中学卒業者ほど高くはないものの、いずれも大学卒よりは上です。
特に中学、高校卒業後の就職者は、大学卒業後よりも年齢が若く悩みも多い時期。仕事に対する不安・不満を解消しきれず、離職してしまう可能性が高いです。また、新しい環境への対応力も高く、転職・退職への抵抗が少ないことも、離職しやすい原因と考えられます。
多様性のある職場づくり、いわゆる「ダイバーシティ化」が近年進んでおり、学歴を重視せずに採用する動きもあります。しかし、若年層は離職しやすい傾向にあるため、リスクを考えた上で雇用することが大切です。
新卒、中途によって差はある?
最後に、新卒採用と中途採用の離職率を比較してみましょう。
(引用元:中小企業庁「第2章 中小企業・小規模事業者における人材の確保・育成」)
「第2章 中小企業・小規模事業者における人材の確保・育成」によると、中小企業における中途採用の離職率は30.6%。一方、新卒採用の離職率は44.2%とあり、新卒採用の方が約1.5倍高いようです。小規模事業者に関しては、中途採用が31.0%なのに対し新卒採用が56.8%と、約2倍の高さにまで及びます。
新卒採用で入社した人は中途採用と違い、初めての社会人経験に戸惑い、悩んでしまうもの。アルバイトの経験があったとしても、正社員としての責任、プレッシャーにはなかなか慣れることができません。学生時代に思い描いていた社会人の姿とのギャップにがっかりし、離職…なんてこともしばしば。新卒採用が中途採用よりも離職率が高いのは、このような入社前と入社後のミスマッチが起きやすいことに理由があると考えられます。
また、中途採用者は前職の経験をもとに転職先を決めますが、新卒は社会人経験がないため、自分に合う仕事・企業がよくわからないまま就職先を決める人も多いです。就活がうまくいかず妥協して決める、周りがどんどん内定をもらっていて、焦って入社先を決めるといったケースも珍しくありません。そして、結局入社後に不満が募り、耐えられず離職してしまうのです。
新卒採用人数は、企業や企業の状況によって違いますが、多いときでは数十人雇用することもあります。新卒の離職率が高いということは、その分教育・採用にかけた費用、労力が無駄になるため、企業は新卒の離職に対して特に慎重になるべきと言えるでしょう。
離職率が高くなる6つの原因
適切な対策を取るには、まず原因を探ることが大切。できれば離職者に直接聞きたいところですが、本当の理由を教えてくれることはほぼありません。
そこで、離職率を高くする恐れがある原因を6つご紹介します。離職理由がわからず困っている経営者、人事部の方はぜひ参考にしてください。
原因1:経済状況・失業率
離職率が高くなる原因としてまず挙げられるのは、経済の状況や求人数などを含む「環境要因」。なかでも就職時の失業率は、離職率に大きく関係すると言われています。
『若年者の早期離職』という書籍の中で、著者の初見康行氏は以下のように述べています。
好況時には仕事と労働者のマッチングの質が高くなるため、勤続年数が長くなる一方、不況期にはマッチングの質が低くなるため、離職行動が促進されるといえる。
(引用元:「初見康行(2018)『若年者の早期退職』(株)中央経済社」)
失業率が高い状況とは、就職先が少ないということ。大学卒業者が入社できるチャンスは少なく、希望の会社に就職できないということです。
希望通りの企業に入社できなければ、当然不満は増えていくもの。よほど運が良くない限り、労働条件や職場の雰囲気、仕事内容に納得できません。そして離職者が多くなってしまうのです。
失業率は、景気が悪いときに高くなります。つまり、経済状況が悪いときは離職率が高くなりやすいのです。このように、離職率は経済状況の影響を受けやすいので、企業は環境の変化が離職率に与える影響を少しでも小さくするよう、対策する必要があると言えるでしょう。
原因2:転職に対する価値観の変化
以前は「一度会社に入ったら、長く勤め続けるのが良い」「すぐ転職するなんて根性がない」といった、転職に対するネガティブなイメージが強かったのですが、最近は考え方が変わってきています。
バブル崩壊後、倒産や赤字に追い込まれた企業は多く、”良い会社に勤めていれば安定”という概念が崩れました。大手の会社に入社しても、従業員はリストラクチャリングや給与減少のリスクを背負っており、企業に対する信頼は失われつつあります。そのような状況では、転職を考える人が増えるのも自然と言えるでしょう。
初見氏も『若年者の早期離職』にて以下のように述べています。
1990年代中盤以降から顕著に現れ始めた労働条件の低下(終身雇用・年功賃金の衰退)という「企業要因」が、若年者の職業環変化という「個人要因」を引き起こした原因であったことが推測される。
(引用元:「初見康行(2018)『若年者の早期退職』(株)中央経済社」)
また、このような考えのもと転職する人が増えれば、「自分も転職した方が良いのでは?」と感化され、離職を考える人も増えていくもの。身近な人が転職で成功している姿を見れば、転職に対する抵抗がなくなり、なかには憧れを抱く人もいるでしょう。
世間一般の概念を、一企業が変えるのは不可能。しかし、「転職するよりもこの会社で働く方が魅力的」と従業員個人に思ってもらえるよう、働きかけることは可能です。どのような対策ができるのかを探るため、企業が作り出す離職の原因について見ていきましょう。
原因3:職場の人間関係が良くない
ランキング |
離職理由 |
割合(男女計) |
1位 |
職場の人間関係が好ましくなかった |
24.1% |
2位 |
労働時間、休日等の労働条件が悪かった |
23.7% |
3位 |
給与条件が悪かった |
18.1% |
「令和2年雇用動向調査結果の概況」によると、「職場の人間関係が好ましくなかった」が離職理由と答えた転職入職者は24.1%。労働条件や給与が原因で離職した人よりも、人間関係が原因で離職した人の方が多い、という結果が出ています。
(引用元:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「若年者の離職理由と職場定着に関する調査」)
また独立行政法人 労働政策研究・研修機構が行った調査では、離職を思いとどまった理由に、職場の人間関係が良かったことが挙げられています。
このことから、労働条件や収入に多少不満があったとしても、人間関係が良ければ離職を防げることがわかります。逆に言えば、労働条件・収入が良くても、人間関係が悪いと離職する可能性が高まるので、企業は従業員同士のコミュニケーションがうまくいくようサポートする必要があります。
原因4:劣悪な労働条件
「労働時間、休日などの労働条件が悪かった」が離職理由として2番目に多く挙げられているように、労働条件の良し悪しも、離職率に大きく影響する要因のひとつです。
例えば、業務を円滑に行うために必要な人員が不足していると、従業員の多くは長時間労働を強いられます。すると、肉体的にも精神的にも疲弊し、離職してしまうでしょう。
また、有給の取りにくさが離職の引き金となっているケースも。社員が疲れを癒し、リフレッシュするのに欠かせない有給制度ですが、「業務に追われて休みが取れない」「代わりに働ける人がいない」「有給申請をすると嫌な顔をされるからできない」などの理由で消化しきれていないことが多々あります。そして、「休みが少ないから」と離職する人が増えてしまうのです。
その他、出産や結婚を理由に離職する場合もあります。プライベートと仕事の両立が難しいと、どんなにその仕事が好きでも勤め続けることができなくなります。就業時間が選べるフレックス制度、テレワーク制度、育休制度などのような環境が整っていない企業は、従業員が出産・結婚を機に離職する可能性が高いでしょう。
原因5:賃金の低下
給与の低さも、離職率に影響を及ぼす原因のひとつ。賃金が低いと生活が窮屈になるため、ストレスが溜まりますし、家族を養っている従業員であれば、生活費が稼げないと離職せざるを得ないでしょう。
(厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概況」をもとに弊社で作成)
先ほどの「産業別月刊現金給与総額」と「令和2年雇用動向調査結果の概況」を比較してみると、一ヶ月の現金給与総額が最も低い「宿泊業、飲食サービス業」は、離職率が最も高いことがわかります。このことから、給与の低さは離職率の高さに関係していると推測できます。
また『若年者の早期離職』によると、2007〜2008年頃から、40歳以降の賃金上昇がほとんど見られなくなってきているとのこと。以前のような「長く働けば給料が上がる」という保証がないため、従業員は勤続へのメリットを感じられず、それが離職につながっていると考えられます。
原因6:働きがいを感じられない
「どの会社に勤めるか」よりも「どのような仕事ができるか」「自分に適した会社か」が重視される近年。特に、若い世代に多く見られる傾向で、仕事に対するやりがいが持てず離職する人が後を絶ちません。
(引用元:内閣府「特集 就労等に関する若者の意識」)
内閣府が2017年に調査したところ、仕事を選択する際「自分のやりたいことできること」を重視すると答えた人の割合は、88.5%(「とても重要」と「まあ重要」の合計)にも登ります。「安定していて長く続けられること」「収入が多いこと」とほぼ同じくらい、”働きがい”があるかどうかが重視されているのです。
従業員がやりたいことができるよう採用時のミスマッチを防止すること、そして、やりがいを持って働ける環境を作ることが、離職を防止する上で非常に大切です。(参考書籍:「初見康行(2018)『若年者の早期退職』(株)中央経済社」)
離職防止の対策が必要な理由とは?
多くの企業が離職防止のため、さまざまな対策を行っていますが、いったいそれはなぜなのでしょうか。
離職防止の対策が必要な4つの理由について詳しく見ていきましょう。
理由1:顧客満足度を向上させるため
離職を防止するということは、従業員が「長く働き続けたい」と思う環境を作るということ。言い換えれば、従業員満足度を上げることが重要ということです。
従業員満足度が上がると、生産性および成果の質が上がります。例えば、十分な休みが取れていて給与にも満足できている従業員は、仕事に対するモチベーションが上がるもの。「より効率よく業務を行おう」「もっと売上げを伸ばそう」「お客様に喜んでもらえる接客をしよう」と、向上心が高まります。
生産性、成果の質が上がれば顧客満足度が上がります。最終的には会社の利益へとつながり、労働環境を整えられるようになるなど、良い循環が生まれるのです。
離職率が顧客満足度アップへ、そして利益アップへとつながる流れを、「サービス・プロフィット・チェーン(以下SPC)」と言います。以下の図をご覧ください。
(参考情報:Putting the service-profit chain to work)
SPCは、ハーバードビジネススクール名誉教授のヘスケット氏らが1994年に発表した、「サービス・プロフィット・チェーンの実践法」と呼ばれる論文の中で提唱されたもの。従業員満足度の向上が商品・サービスの質を高め、その結果、顧客満足度と企業利益を向上させる、という考え方です。
プロセスは7段階に分けられており、ある1段階の工程を改善させることで、他の段階での活動も改善する、といった相乗効果が期待できます。離職防止対策は、一見、顧客満足度とは関係がないように思えますが、SPCにもある通り”一石二鳥”が狙える取り組みなのです。
SPCおよび従業員満足度について、以下の記事でより詳しく解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
■参考記事
従業員満足度(ES)とは?測り方や満足度を高める方法、改善事例を解説!
理由2:労働環境を整えるため
離職者が多いと、当然職場の人員が不足してしまいます。人員を補充するには中途採用を行ったり、アルバイト・パート社員を採用したりする必要がありますが、着実に良い人材を確保できるとは限りません。離職者が出る前の状態へと戻すにも、教育に時間がかかってしまいます。
人員が不足した状態では、業務を円滑に回すことが難しく、長時間労働を強いられることも。残された従業員は疲弊し、さらに離職者が増える、といった負のループが生まれてしまうでしょう。
離職を防止することは、このような人員不足問題を避けるためでもあります。従業員数を十分に確保できていれば、一人一人への負担が少なく、それぞれが健康的な状態で業務に取り組めます。すると「SPC」にもあるように、業務効率・成果の質が向上し、会社の利益が従業員に還元されることで従業員満足度が上がり、さらなる離職防止へとつながるでしょう。
また、人材が定着すると、経験・知識・ノウハウが豊富な従業員が増えます。特に、接客業などのような経験が売上げに大きく関係する仕事では、経験者による会社への貢献度は高いです。そのような有能な人材を逃さないためにも、離職防止対策が重要と言えます。
理由3:入社希望者を減らさないため
離職率が高い会社は、「働き続けたいと思う従業員が少ない」というイメージを周りに与えてしまいます。場合によっては、「ブラック企業だ」とレッテルを貼られる可能性もあるでしょう。
離職率は、基本的に外部に漏れることはありませんが、離職者が多いという口コミは広まる恐れがあります。最近ではSNSの普及により、インターネットで「あの会社はブラック企業らしい」と噂されることも珍しくありません。
このようなイメージがついてしまうと、入社希望者が少なくなる可能性が高まります。給与が低い、社内の雰囲気が悪い、仕事がきつい…そんな会社にわざわざ働きたいと思う人はほとんどいないからです。どうしてもそこで働かなくてはならない、自分のやりたいことがその会社でしかできない、といった特別な理由がない限り就職したいとは思わないでしょう。
入社希望者が少なくなると当然採用人数が減少し、人員不足に陥ります。労働環境が悪くなり、そして離職者が増える、最悪の事態になりかねません。そのような事態を避けるためにも、やはり離職防止対策は必要不可欠です。
理由4:採用・教育コストを無駄にしないため
企業が円滑に運営するためには人員確保が欠かせませんが、離職者が多ければ多いほど、何度も採用を行わなくてはなりません。
採用には、求人情報を載せるための費用、人材紹介会社への手数料、人材教育の教材費などさまざまな費用がかかります。しかし、従業員がすぐ離職するとそれら全てが無駄に。そして採用・教育を繰り返すたび、どんどんコストがかさんでいきます。
株式会社産労総合研究所が行った調査による、従業員1人あたりの教育研修費用は平均で約3万5000円というデータもあります。仮に20人の新卒採用を行った場合、少なくとも70万円かかるのです。教育費だけでもこれだけかかり、さらに採用や福利厚生に力をいれるとなると、かなりの額になるでしょう。
とはいえ採用・教育への出費を惜しみ、内容を厳かにしてしまうと、優秀な人材を育てることができません。その結果、会社の業績を上げられず給与が低くなり、離職者が増えるといった状況になりかねないので、離職防止対策を行う方が効率が良いと言えます。
離職を防止するためには各段階での対策が必要
離職防止対策の効果を高めるには、ただがむしゃらに行えば良いのではなく、的確なアプローチが必要です。採用段階でできる対策、教育段階でできる対策を知り、そのタイミングで行うべき取り組みは何かを正確に見極められるようにしましょう。
採用段階での対策と事例
離職を防止するには入社後の取り組みが重要かと思いきや、実は採用段階でもできることがあります。具体的にどのような対策ができるのか、「公益財団法人日本生産性本部」発行の「若者が定着する職場づくり取り組み事例集」」に記載されている事例とともに見ていきましょう。
対策1:採用時のミスマッチを防ぐ
入社前に想定していた会社・仕事に対するイメージと、入社後の現実とにギャップがあると、従業員は離職を考えてしまうものです。「自分の能力が発揮できる仕事ではなかった」「会社の風潮が合わない」「言われていた配属先とは違うところに配属された」など、違和感やストレスを感じると辞めてしまう可能性が高まります。
このようなミスマッチを防ぐため、企業は面接時や会社説明時に、仕事内容や社内の雰囲気を嘘偽りなく伝え、理解してもらう必要があります。特に、良い印象を持ってもらおうとすると、誇張したり事実とは異なることを言ってしまいがちですが、ミスマッチが起きて離職するようでは意味がありません。誠実に正しく伝えることが大切です。
また、入社前に社内の雰囲気を見てもらったり、仕事の雰囲気を感じてもらったりすることも、ミスマッチの防止につながります。インターンシップや、体験入社などを取り入れている企業もあるので、ぜひ参考にしてみましょう。
<事例>株式会社アイネット
横浜市にあるITサービス企業「アイネット」は、採用後のミスマッチを防ぐ対策として、長期間の新人研修を行っています。
以前は、新入社員研修を2ヶ月間で行っていましたが、2010年から6ヶ月間へと延長しました。期間中は、ビジネスマナーやITスキルの研修に加え、社内インターンシップも実施しています。インターンシップでは、新入社員に全業務を経験させ、そこで配属先の適性を見極めているのだそうです。
その結果、6ヶ月間の新入社員研修を導入してから、若年層が定着しやすくなったとのこと。この会社は例年40〜50人ほど採用していますが、3年以内の離職者は3〜4人程度(2018年時点)に留められているのだそうです。(参考資料:公益財団法人日本生産性本部「若者が定着する職場づくり取り組み事例集」)
研修・教育段階での対策と事例
では次に、研修・教育段階での対策について解説していきます。効果的なオンライン研修、OJTを可能にするクラウド型eラーニングサービス「shouin+(ショウインプラス)」を活用した事例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
対策2:新卒研修で細かいフォローを行う
新卒社員は、入社してすぐは右も左もわからない状態で、なにかと戸惑ってしまうもの。業務についての知識がないのはもちろん、社会人としてのマナーや基本もわからず、ミスをしてしまうことも多々あります。
そして「自分はこの仕事に向いていないのではないか」と疑問を持ち、離職してしまうケースが少なくありません。よって企業は、新卒研修で細かく教え、フォローすることが大切です。
基本的なビジネスマナーや社会人としての心構え、仕事内容、備品、社内構造など、隅々まで丁寧に教育します。接客業であれば、正しい言葉遣いや身だしなみなどの教育もマストでしょう。
また、ただ教えるだけではなく、きちんとサポートすることも重要な対策のひとつ。研修後は放置せず、正しく業務を行えているかどうか確認し、アドバイスします。そうすることで、新入社員は「自分のことを見てくれている」と安心感を得ることができます。さらに、いつでも相談できる環境も整えておけば、仕事に対する不安も取り除いてあげられるでしょう。
<事例>株式会社ユナイテッドアローズ
大手アパレルセレクトショップを運営する「ユナイテッドアローズ」は、新人教育における店舗への負担軽減、および入社前の教育強化を目的として、弊社サービス「shouin+」の導入を実施しました。
shouin+導入以前は、新人研修は対面で1〜2回行う程度で、十分な教育ができないといった問題を抱えていました。そこで、遠隔で教育できる「shouin+」の動画研修を取り入れ、業務内容や接客スキルなど、細かい点までしっかりと教育できるようにしました。
また「shouin+」を活用することで、内定者の状況を把握し、フィードバックすることも可能に。笑顔の作り方や服の畳み方など、実際に目で見ないとわからないような業務の取り組み方を常に確認し、コメントを返すといった、細やかなフォローを実現したのです。
アパレル企業や飲食企業など店舗型ビジネスでは、本社と現場が離れている場合が多いです。動画を使ったツールの活用は、そのような遠隔での研修・教育を必要とする場合に有効な手段のひとつ。時間や場所に縛られることなく、十分な教育、フォローができるのはもちろん、店舗での教育負担を減らすメリットもあります。
対策3:活躍できる社員を増やせる研修を行う
従業員に対する教育が不十分だと、業務を効率よくこなせない、仕事の成果が上がらないといった問題が生じます。従業員は「自分は仕事ができない」と自信を失い、離職する可能性が高いです。
よって離職を防止するためには、社員が活躍できるよう丁寧に指導することが重要。卓上の理論を並べた教育ではなく、きちんと業務改善につながる実用的な研修が欠かせません。
新卒研修でも細かいフォローが大切と解説しましたが、仕事に慣れてきてからも定期的に研修を行うことで、従業員のさらなる成長ができます。より重要な仕事を任せられるようになれば、社員のモチベーションも上がり、離職防止へとつながるでしょう。
また、指導者や管理者としての実力がある社員が増えれば、企業利益の向上も見込めます。従業員および会社の成長を促進させるため、ぜひ積極的に行いましょう。
<事例>株式会社ミスターマックス・ホールディングス
総合ディスカウントストア「MrMax」を運営する株式会社ミスターマックス・ホールディングスも、「shouin+」の動画研修を活用している企業です。こちらの会社は、幹部候補の従業員を育てることを目的として、社会におけるディスカウントストアの役割や総務・労務などを、動画研修を通して指導しています。
以前は、研修にかける予算や時間が限られているせいで、教えたいことの全てを指導することが叶いませんでしたが、動画研修の活用によりそれが可能に。専門用語や販売ノウハウなど詳しいことまで教育できるようになり、その結果、単価の高い商品の販売に成功した事例もあります。
また、あるパート従業員がお客さまからの質問を受けた際、社員に頼ることなく解決できた、という事例も。業務の成果が高く、実力のある従業員を育てることに成功した例です。
対策4:従業員のメンタルヘルスケアをこまめに行う
日々業務を行っている従業員は、どうしてもストレスを抱えてしまうもの。特に新入社員は環境に馴染むのに時間がかかるため、仕事に対する不安が募りやすいです。気軽に相談できるほど気が合う同僚、先輩がいない限り、不満は大きくなる一方。最悪の場合、精神的な病にかかり離職する恐れがあります。
そのため企業は、従業員のメンタルヘルスケアをこまめに行う必要があります。質問や相談事がないか気にかけるのはもちろん、定期的な面談や、風通しの良い雰囲気づくりも大切です。また、専属で面倒を見るバディー制度などを導入するのも良いでしょう。
メンタルヘルスケアが十分に行われていれば、仕事で嫌なことがあっても、「もう少し頑張ってみよう」と離職を思いとどまってくれる可能性が高まります。
気持ちの持ちようは人によって違うので、どんなに努力しても離職を防げないこともありますが、少しでも定着をさせるためぜひ取り組みましょう。
<事例>ミュゼプラチナム
人気美容脱毛サロン「ミュゼプラチナム」を運営している株式会社ミュゼプラチナムは、研修中の現場の様子をリアルタイムで確認できないことを懸念し、「shouin+」を導入しました。
「shouin+」は研修機能が充実しているツールですが、ミュゼプラチナムでは「日報」機能を特に活用しており、研修期間中の新人スタッフの日々の進捗をリアルタイムで確認でき、いつでもフォロー可能な環境整備の実現に成功しました。
「日報」には、ただ様子をチェックできるだけでなく、指導者が社員個人に向けてコメントできる機能も備わっています。本社にいるトレーナーからコメントをもらうことで、会社から「フォローしてもらえている」と実感する、という声も上がっているのだそう。それが新入社員のモチベーションアップにつながっているようです。
参考資料:導入事例(shouin+)
社員エンゲージメントの向上につながる4つの施策と事例
離職を防止するための対策には、”エンゲージメント”の向上が欠かせません。エンゲージメントは「誓約」「契約」を指す言葉ですが、人事用語としては「組織に対する愛着心」や、「企業に貢献したいと思う気持ち」「社員が自発的・主体的に動く姿勢」などを意味する言葉として使われています。
『組織の未来はエンゲージメントで決まる』という書籍には、コンサルティング会社ウイルス・タワーズワトソン氏による、エンゲージメントの定義が記載されています。
従業員の一人ひとりが企業の掲げる戦略・目標を適切に理解し、自発的に自分の力を発揮する貢献意欲
(引用元:「新井佳英、松林博文(2018)『組織の未来はエンゲージメントで決まる』英治出版」)
最近では以前と比べて、正社員の転職がかなり身近なものに。「仕事が合わない」「待遇が悪い」と感じたら、転職することが当たり前になってきています。
そのような状況の中、離職を防止するためには社員に働きがいを持ってもらうこと、つまり社員エンゲージメントを向上させることが重要。先ほどの書籍によると、エンゲージメントが低い従業員が1年以内に離職する可能性は9.2%、高い従業員は1.2%という調査結果も出ているそうです。
では、エンゲージメントを高めるにはどのようなことを行えば良いのでしょうか。対策と事例をご紹介していきます。
対策5:責任感を与える取り組み
エンゲージメントを向上させるには、従業員の意欲を掻き立てることが重要。好奇心や湧き上がるモチベーション、いわゆる「内発的動機付け」をするため、従業員に責任感を与える取り組みを行うことが大切です。
若手社員にも責任のある仕事を任せたり、重要な業務に携わらせたりすることで、「自分もこの組織の一員である」という自覚が生まれます。また、任せる仕事の難易度を上げる、経営や企画など上層部の業務に参加させるなども、従業員に責任感を与える施策です。
特に、長く勤めている経験豊富な社員は、利益や業務効率を優先し、自分で何でもやろうとしてしまいがち。しかしこれは、部下や後輩が活躍するチャンスを奪う行為です。「やらされている感」が強くなり、モチベーションがダウンしてしまう可能性が高いので、仕事を割り振るよう意識しましょう。
<事例>株式会社アルファイン
エステティック事業を営む株式会社アルファインは、従業員のエンゲージメント向上のため、提案制度を活用しています。
もともと会社の上層部のみで行っていた会議に、現在、一部の社員を参加させているのだそう。会議にて、商品やサービスに関する提案をしてもらうことで、自発性を促進しています。二次元バーコードを活用した顧客案内や、新商品の開発など、経営者・店長以外の従業員が提案したアイディアを、実際に取り入れた例もあります。
また、コンテストやクリスマスパーティーなど社内イベントの開催を、スタッフ主導で行っています。そうすることで、社員の自発性・主体性を高めているのだそうです。
対策6:内発的動機付けのための評価制度
やりがいのある業務を任せることは、達成時、従業員に大きな喜びを与えます。しかし、評価されないと徐々に喜びは薄れていき、次第にモチベーションが下がってしまうもの。「頑張っても意味がない」とやる気を失ってしまいます。
内発的動機付けのため、きちんと評価することも大切。インセンティブ制度や、賞与は代表例です。言葉で評価するのはもちろん、金銭的な価値を与えることにより、効果的に従業員の意欲アップへとつながります。
ただし、評価基準や理由を明確に説明しないと、従業員はどのような点において評価されているのかわからず、素直に喜ぶことができません。特に評価が下がったとき、前回と比べて何が良くなかったのかが不透明だと、会社に不信感を抱いてしまいます。かえって逆効果になる恐れがあるため、透明化を意識しましょう。
<事例>株式会社ねぎしフードサービス
「牛たん とろろ 麦めし ねぎし」を中心に全39店舗を展開する飲食チェーンである株式会社ねぎしフードサービスは、内発的動機付けのためさまざまな取り組みを行っています。
ひとつは、アンケートと従業員表彰の実施。店舗に常設されているアンケートにて顧客満足度を調査し、お客さまからの評価が高かった店舗を社内公表しています。また、アンケートの「本日輝いていたスタッフの名前」という項目に名前を書かれた従業員を、毎月約450人表彰することで、従業員のやりがいにつなげています。
また、各種コンテストの実施にも注力しています。調理能力やサービス、クリンリネスなどいくつかの部門で分けられたコンテストを行っており、それぞれ評価の高かった店舗、得点が大幅に向上した店舗を表彰しています。
毎年従業員満足度のアンケートを実施しているのですが、2016年の従業員総合満足度が約85%と高い評価を得ているとのこと。そして、約85%の従業員が「自分の仕事にやりがいを感じる」と答えたそうです。またコンテストの実施は、サービス・業務改善のための対策を従業員自ら考える良い機会となっており、その結果、顧客満足度の向上、業績アップに繋がっているそうです。
対策7:定期面談による丁寧なサポート
サポートが必要なのは、新入社員だけではありません。1年以上働いている従業員も、新しい役職での業務や後輩指導に関する悩み、ストレスを抱えています。
そのため、役職・勤続年数に関係なく定期的に面談を行い、困っていることはないか、悩み迷っていることはないか確認することが大切です。悩み相談だけでなく、目標の設定や目標達成方法などのサポートも行うことで、従業員の成長を促すこともできます。部下が自身の成長を感じることができれば、自信がつき、エンゲージメントの向上につながるため積極的に行いましょう。
面談を行う際は、一方的にならないよう注意が必要です。自発性を促進するため、面談を受ける側の従業員が発言しやすい雰囲気を作りましょう。社員に、面談してもらいたい人を選んでもらうのも効果的。部下が「この人からフィードバックを受けたい」と選んだ人であれば、正直に悩みなどを話しやすくなるので、ぜひ試してみてください。
<事例>株式会社セントラヴィ
エステティックサロンを経営する株式会社セントラヴィは、入社3年目以降の離職を減らすため、従業員のメンタルケアを目的とするさまざまな施策を行っています。
定期面談制度はそのうちのひとつ。店長と月1回、役員と年2回の面談を行い、目標や悩み、今後の夢などについて話す機会を設けています。部下が話しやすい雰囲気づくりに注力しており、次第に、面談にて意見を言ってくれる社員が増えていったのだそうです。
また、新入社員1人に対し、専属で教える先輩社員をつける「シスター制度」も導入しています。通常、入社したばかりの頃は人間関係が構築できておらず、1人で悩みを抱え込んでしまいがち。しかし、シスターが常に共に行動することで、悩みを打ち明けやすい環境を作っています。
その結果、従業員同士のコミュニケーションが円滑になり、「チームで取り組むことの楽しさを実感できている」との声も上がっているのだそう。主体的に取り組む社員が増えたなど、さまざまな良い効果をもたらしているようです。
対策8:ライフスタイルに合わせた働き方制度
就業時間、労働条件に不満があると、仕事に対するモチベーションが下がるのは必然。社員エンゲージメントが向上しないどころか、出勤することさえも苦痛になり、離職する可能性があります。
そのため、従業員が意欲的に働けるよう労働条件を見直し、環境を整えておくことが重要です。テレワークや育休制度、フレックスタイム制度など、個人のライフスタイルに合わせて就業できる制度を取り入れれば、社員は心地よく働けるようになるはず。「長く働き続けたい」と思ってもらえるでしょう。
多くの企業が有給制度を設けていますが、きちんと消化できるよう配慮が必要。有給で誰かが休んでも支障が出ないよう業務改善する、会社全体で有給を積極的にとり、若年層も申請しやすい雰囲気を作るなど、きちんと有給を活用できる環境を目指しましょう。
<事例>Hair room DOOR
大阪府大阪市内に店舗を構えるヘアサロンHair room DOOR。この会社では、育休後の仕事復帰をスムーズにするため、3つの労働形態を導入しています。
- 短時間で正社員として働く
- 一時的にパート雇用として働く
- フレックスタイム制(就業開始時間、終了時間を従業員自ら決められる制度)
上記3つの働き方から、各々自分のライフスタイルに合うものを選び、就業できる制度です。この制度は女性従業員の離職防止だけでなく、入社希望者を対象とした人材確保のためにも役立てられています。
またこの制度を導入するにあたり、従業員からの意見も積極的に取り入れました。それにより、会社と従業員との間に信頼関係が生まれ、個人ミーティングなどで社員が意見を述べてくれることも増えたそうです。
「Hair room DOOR」の取り組みは、社員がのびのびと働ける環境を作ること、社員の自発性を促すこと、その両方を成功させた良い事例です。労働環境の改善とエンゲージメントの向上を目指したい方は、ぜひ参考にしてみましょう。
ちなみに離職防止の対策は、下記記事でもご紹介していますので、ぜひこちらも併せてご覧ください。
■参考記事
定着率とは?業種別の平均や目安、上げる方法や重要ポイントまでわかりやすく解説!
参考書籍:「新井佳英、松林博文(2018)『組織の未来はエンゲージメントで決まる』英治出版」
参考資料:公益財団法人日本生産性本部「若者が定着する職場づくり取り組み事例集」
まとめ
今回、離職防止のための効果的な方法をご紹介しましたが、これらが最適とは限りません。どのような方法が自社にとって一番良いのかを見極めること、そして状況に合わせて工夫することが大切です。
悩んでしまったときは、社員に意見を聞いてみるのも良いでしょう。どうすれば良いか一緒に考えることで職場に一体感が生まれますし、従業員の自発性も高められるはずです。
対策を考える上でコミュニケーションがうまくいかない場合は、弊社の「shouin+」を活用してみるのもひとつの手です。部下の成長促進、業務改善など、離職防止以外にもさまざまなメリットがあるので、ぜひ一度活用してみてください。