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ホスピタリティ研修とは|プログラムの作り方と実施のポイント

ノウハウ ナレッジ
2024.09.27
『shouin+ブログ』マーケティング担当

現代のビジネス環境は、かつてないほど顧客体験を重視する時代へと進化しています。同時に、深刻な人材不足とIT技術の発展により、多くの業務プロセスが自動化され、人間の仕事は機械に取って代わられるようになりました。

一見、相反するこの二つの潮流ではありますが、どちらも「人間にしかできない仕事の価値」の高まりを意味する時代の流れだと言えます。顧客体験の価値はホスピタリティとの関連性が高く、一方で自動化が進む時代において人間にしかできない仕事の価値が高まるのは自然なことでしょう。このように、今はホスピタリティの価値が重視される時代になったと考えてよさそうです。

しかしながら、ホスピタリティを高めるためにどのような研修が効果的なのか、具体的に分からない方も多いことでしょう。

そこでこの記事では、ホスピタリティ研修の基礎知識から具体的な手法、さらには有名企業の事例まで、くわしく解説していきます。リッツカールトンやディズニーなど、ホスピタリティに定評のある企業の取り組みも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

ホスピタリティ研修とは?

そもそも、ホスピタリティ研修とは具体的にどのような研修なのでしょうか。まずは、ホスピタリティの定義を整理しつつ、研修の目的と重要性について見ていきます。

ホスピタリティの定義と三大要素

ホスピタリティとは、「おもてなしの心」や「歓待の精神」と訳されることが多い言葉です。単なるサービスを超えた、心のこもったおもてなしを指します。

また、日本では曖昧なイメージで語られやすいホスピタリティですが、欧米でのホスピタリティは下記の三つの要素があると言われています。これらの要素を意識した言動を心がけることで、真のホスピタリティに近づくことができるでしょう。

ホスピタリティの三大要素

  • Safety(安全であること):お客様の安全を確保すること
  • Courtesy(心くばりがあること):お客様の立場に立って考えること
  • Amenity(快適であること):お客様が快適な時間を過ごせるよう考えること

たとえば、レストランで子連れの家族に気づいたスタッフが、子どもの年齢を理解し、適切な座席やメニューを提案するといった行動をとることは、ホスピタリティの実践例と言えます。

 

ホスピタリティとサービスの違い

「ホスピタリティ」と「サービス」は似て非なるものです。ホスピタリティ研修を効果的に進めるためにも、その違いを正しく理解しておきましょう。

まず、サービスは、基本的に対価を得て提供される行為や商品を指します。一方、ホスピタリティは、相手の立場に立って考え、心からのおもてなしを提供する姿勢や行動を意味します。

具体例から考えてみましょう。ホテルでの朝食(ビュッフェ)をイメージしてみてください。決められたメニューを提供し、食器を下げるだけなら「サービス」の範囲内です。しかし、常連のお客様の好みを覚えていて「いつもの、お好きなオムレツをご用意いたしました」と声をかけたり、お客様の体調を気遣って温かい飲み物を勧めたりするのは、サービスの範囲を超えた「ホスピタリティ」と言えるでしょう。

また、ホスピタリティに非常に似た言葉として「接遇」があります。そして接遇もまた、サービスの範疇を超え、相手を「もてなす」「思いやる気持ちをもって応対する」という意味合いが強い言葉です。接遇は日本発祥の言葉であり、ホスピタリティはラテン語が由来と言われており、語源は別であっても、その意味合いは大きく変わらないものと考えてよいでしょう。

■参考記事はこちら

接遇とは?接客との違いや5原則などを業種別事例からわかりやすく紹介!

 

ホスピタリティ研修の目的

ホスピタリティ研修の主な目的は、従業員のホスピタリティマインドを育成し、顧客満足度の向上につなげることです。さらに細かくみれば、以下のような目的があります。

  • ホスピタリティの基本概念の理解
  • お客様の信頼を得る対応スキルの習得
  • チームワークと社内コミュニケーションの向上
  • ブランド価値の向上につながる行動の習得
  • 従業員の自己実現とモチベーションの向上

これらの目的を達成することで、企業全体のサービス品質が向上し、とくに顧客の企業に対する愛着や信頼を示す「顧客ロイヤリティ」の醸成にもつながるでしょう。

なお、顧客満足度についてくわしく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。顧客満足度とは何かという基本から、その必要性、また顧客満足度を高める具体的な施策まで解説しています。

■参考記事はこちら

顧客満足度(CS)とは?調査方法や向上させるポイントをわかりやすく解説!

 

 

ホスピタリティ研修に期待される効果

ホスピタリティ研修を実施することで、企業にはどのような効果が期待できるのでしょうか。具体的な事例を交えながら、主な4つの効果について見ていきましょう。

効果1.顧客満足度の向上と顧客ロイヤリティの強化

ホスピタリティ研修の効果として最も期待される効果は「顧客満足度の向上」と「顧客ロイヤリティの強化」です。国内の研究においては、おもてなしと顧客満足度の関係性が多数報告されています。

また、ある調査では、おもてなしに定評のある旅館の口コミデータを分析したところ、おもてなしの要因は「従業員」「朝食」「夕食」「風呂と宿」「部屋」の5つの因子が関係していることが明らかにされました。

顧客満足度が向上すれば、口コミでの評判も良くなり、新規顧客の獲得にもつながります。さらには、「このサービスを人に紹介したい!」「このブランドが好きだから応援したい!」というように、顧客ロイヤリティを強化することで、多くのファン獲得にもつながっていくことでしょう。

 

効果2.ブランドイメージと企業価値の向上

ホスピタリティの高い企業は、そのブランドイメージも向上します。顧客に寄り添い、心のこもったサービスを提供する企業として認知されれば、企業価値の向上にもつながるのです。

くわしくは後述しますが、ホスピタリティといえば世界的に有名なホテルリッツ・カールトンをはじめ、ディズニーやスターバックスなどが例としてよく挙げられます。そして、いずれもそのイメージとして浮かぶのは、接客の範疇を超えた心ある「おもてなし」ではないでしょうか。

ホスピタリティ研修では、従業員のマインドセットを変えることで、企業全体のイメージアップと企業価値の向上につなげていく意図があるのです。

 

効果3.従業員エンゲージメントの向上

ホスピタリティ研修は、顧客満足度だけでなく、従業員のエンゲージメント向上にも大きな効果があります。従業員エンゲージメントとは、従業員がその職場や組織に対して「貢献しようとする意欲」を表すものです。従業員が自分の仕事の意義や重要性を理解し、お客様に喜んでもらえる経験を積むことで、仕事へのモチベーションが高まるのです。

実際に、かつてのリッツ・カールトン大阪で営業支配人・営業統括支配人を務めた林田正光氏の著書では、従業員満足と顧客満足の関係性について以下のように述べられています。

お客様が満足されるサービスを提供するためには、前提条件として従業員の職場環境が整っていないといけません。従業員が会社に対して不平不満があると、お客様に気持ちよく接することは不可能となります。快い気持ちを常に持ち続けている人だけが、他人に気持ちのよいサービスを提供できるのではないかと思います。

林田正光著(2020)「【新装版】ホスピタリティの教科書」株式会社あさ出版

このように、従業員が生き生きと働くことこそが、顧客満足度につながる第一ステップになります。

■参考記事はこちら

従業員エンゲージメントとは?言葉の意味、構成要素、向上策、調査方法などについてわかりやすく解説!

従業員満足度(ES)とは?測り方や高める方法、改善事例を解説!

 

効果4.従業員のスキル向上

ホスピタリティ研修は、従業員の実践的なスキル向上にも大きく貢献します。単なる接客マナーだけでなく、以下のようなスキルの向上が期待できます。

  • コミュニケーション能力
  • 状況判断力
  • 問題解決能力
  • 感情コントロール能力
  • チームワーク力

たとえば、スターバックスコーヒーでは、「コネクション(つながり)」を重視したホスピタリティ研修を行っています。従業員はお客様との会話を通じて信頼関係を築く方法を学び、それがコーヒーの販売だけでなく、人間関係構築のスキルとしても活かされているのです。

以上のように、ホスピタリティ研修には多くの効果が期待できます。顧客満足度の向上はもちろん、従業員の成長や企業価値の向上など、多面的なメリットがあるのです。

 

 

ホスピタリティ研修のプログラム内容

一般的なホスピタリティ研修では、どのようなプログラムが用意されているのでしょうか。ここでは、典型的なホスピタリティ研修の内容を紹介していきます。

①ホスピタリティマインドの醸成

ホスピタリティ研修の第一歩は、従業員のマインドセットを変えることです。ホスピタリティマインドとは、お客様の立場に立って考え、心からのおもてなしを提供しようとする姿勢のことを指します。

そして、このホスピタリティマインドを醸成するためには、具体的に以下のようなポイントを押さえながら研修を行うと効果的でしょう。

  • ホスピタリティの定義と重要性を理解する
  • 自社の企業理念やビジョンを再確認する
  • 顧客満足度の基本とホスピタリティとの関係性を学ぶ
  • 自身の経験を振り返り、心に残っているサービスをアウトプットする

たとえば、グループワークを通して「自分が受けて嬉しかったサービス」について話し合い、その共通点を見出すといった演習も効果的でしょう。このような活動を通じて、ホスピタリティの本質を理解し、実践しようという意識を高めていくのです。

 

②ホスピタリティにおける基本スキルの習得

ホスピタリティマインドを身につけた後は、具体的なスキルの習得に移ります。ここでは、ホスピタリティを実践する上で必要不可欠な基本スキルを学びます。

ホスピタリティにおける基本スキル

  • 非言語コミュニケーション:表情、姿勢、アイコンタクトなど
  • 積極的傾聴:相手の話を真摯に聞き、理解する技術
  • 状況察知力:お客様のニーズや気分を察知する能力
  • 問題解決能力:予期せぬ事態に柔軟に対応する力

たとえば、非言語コミュニケーションの研修では、鏡を使って自分の表情や姿勢をチェックしたり、ペアワークで相手の気持ちを表情だけで伝え合ったりする演習が効果的でしょう。このような実践的な訓練を通じて、お客様との円滑なコミュニケーションに必要なスキルを磨いていきます。

 

➂ロールプレイングを通したスキルトレーニング

座学で学んだスキルを実践的に身につけるため、多くのホスピタリティ研修ではロールプレイングが取り入れられています。ロールプレイングとは、実際の接客場面を想定して、受講者がお客様役とスタッフ役に分かれて演じるトレーニング方法です。具体的には、以下のような場面を設定してロールプレイングを行うとよいでしょう。

  • 多忙時の接客:複数のお客様に同時に対応する場面
  • 特別なリクエストへの対応:予期せぬ要望への柔軟な対応
  • クレーム対応:不満を持ったお客様への対応
  • 外国人のお客様への対応:言語や文化の違いに配慮した接客

たとえば、「予約ミスで部屋が足りない」という設定で、フロントスタッフがどのように対応するかをロールプレイングで実践するなどの方法が効果的でしょう。このようなトレーニングを通じて、実際の現場で起こりうる様々な状況に適切に対応できる力を養っていきます。

 

④フィードバックと自己評価

ホスピタリティ研修の最後には、フィードバックと自己評価のタイミングを設けましょう。そうすることで、研修全体を通じて学んだことを振り返り、自身の強みと改善点を明確にすることができます。

フィードバックと自己評価の実施例

  • 講師から個別のフィードバックを行う
  • 受講者同士での相互評価を行う
  • 評価シートを活用した自己評価を行う
  • 今後の行動計画を作成する

たとえば、ロールプレイングの様子を録画し、受講者全員で視聴しながら良かった点や改善点を話し合うといった方法も効果的です。また、「1週間後」「1ヶ月後」「半年後」といった具体的な時期を設定し、自身の行動目標を立てることで、研修後の実践につなげやすくもなるでしょう。

このように、フィードバックと自己評価のプロセスを通じて、受講者は自身の成長を実感し、さらなる向上心を持つことができるようになります。

なお、効果的なフィードバックの方法については、下記の記事でくわしく解説しております。ぜひ参考にご覧ください。

■参考記事はこちら

教育を効率化するフィードバックの方法とは?心理学的な観点からも解説!

 

 

ホスピタリティ研修を実施するためのステップ

ホスピタリティ研修を自社で実施したい、でも具体的にどう進めればいいのか分からない。そんな悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。そこでここからは、ホスピタリティ研修を内製化するための5つのステップについてご紹介いたします。

ステップ1.現状分析と目標設定

まずは、自社の現状分析と目標設定を行いましょう。現状の顧客満足度や、その結果に対する目標を明確にすることで、ホスピタリティ研修の意味が大きく変わってきます。具体的には、以下のような調査を進めていくとよいでしょう。

現状分析と目標設定の実施例

  • 顧客満足度調査の実施:現在の顧客満足度を把握する
  • 従業員の意識調査:ホスピタリティに対する理解度や意識を把握する
  • 競合他社との比較:業界内での自社の位置づけを分析する
  • 具体的な目標設定:「1年後に顧客満足度を10%向上させる」など、明確な目標を立てる

たとえば、飲食店チェーンで「接客の丁寧さ」に関する顧客評価が低ければ、「6ヶ月後に接客評価を20%向上させる」という目標を設定するなど、できる限り具体的な目標設定を行います。顧客満足度調査も、決して難しいものでなくてもよいでしょう。大切なのは、現状の評価と今後の目標を「数値化」することです。

 

ステップ2.研修内容の設計と計画

目標が定まったら、次に具体的な研修内容を設計していきます。ここでは、以下のようなポイントを意識しながら計画を立てていきましょう。

  • 研修受講者の選定(新入社員か、全従業員か、特定の部署か、管理職かなど)
  • 研修期間の設定(1日完結型または、数ヶ月に渡る長期プログラムなど)
  • 研修内容の決定(座学、ロールプレイング、グループワークなど)
  • 講師の選定(社内講師の育成または、外部講師の活用など)

たとえば、新入社員向けに2週間の集中研修を実施し、その後3ヶ月間のOJT(実地研修)を組み合わせるプログラムなども良いでしょう。反転学習といって、Off-JTの後にOJTを実施することで、研修をより効果的に進めることができます。

また、研修計画を立てる際には、弊社が独自で作成した人材育成計画書が役立ちます。下記リンクから無料でダウンロードいただけますので、ぜひご活用ください。

人材育成計画書テンプレート

 

ステップ3.実施方法(手段)の検討

研修内容が決まったら、次にその実施方法を検討しましょう。近年では、対面式の研修だけでなく、オンラインツールなどの様々な手法があります。以下に挙げる手法を参考に、自社に最適な方法を選択してください。

研修の実施方法の例

  • OJT:実務を通した職場内訓練
  • 集合研修:従来型の対面式研修
  • Webセミナー:Web上で行う講義形式の研修
  • eラーニング:オンラインで学習できる研修システム
  • 動画研修:録画された動画講義の視聴やデモンストレーションによる研修
  • ブレンディッドラーニング:対面とオンラインを組み合わせた研修方式

実施方法は、大きく分けて「オフライン」と「オンライン」の2つの方法に分けられます。オフライン研修は受講者一人ひとりの進捗を確認しやすいメリットがあり、一方でオンライン研修は場所を選ばないため、全国に支社を持つような企業では有効に活用できるでしょう。

 

ステップ4.研修プログラムの実施

いよいよ研修プログラムを実施する段階です。下記のポイントに注意しながら、計画に沿って研修プログラムを実践していきましょう。

  • 研修の目的や計画を共有するため、オリエンテーションを実施する
  • 一方通行の講義にならないよう、参加型の研修を心がける
  • 受講者が成長を実感できるよう、フィードバックの機会を設ける
  • 受講者との意思統一を図るため、定期的にミーティングを行う

また、研修プログラムを実施するうえでは、予定よりも進捗が遅れたり、思うような結果が得られず焦りを感じることもあるかと思います。しかし、そんな時こそ、焦らず柔軟な考えをもって対応していくことが大切です。研修は、決して順調に進むことが前提ではありません。定期的に目的を再確認しながら進めていきましょう。

 

ステップ5.評価とフォローアップ

最後に重要なのが、研修の評価とフォローアップです。受講者アンケートや上司評価などを実施し、研修の効果を測定していきましょう。

研修後に実施すると効果的なもの

  • 受講者アンケート:研修直後の満足度や理解度を確認する
  • 顧客満足度調査:研修前後での顧客評価の変化を調査する
  • 上司による評価:研修後の行動変容を観察する

とくに顧客満足度調査は、研修後3ヶ月、6ヶ月、1年と定期的な調査を行うことで、ホスピタリティ研修による変化を実感しやすくなります。また受講者アンケートや上司による評価は、次回のホスピタリティ研修に活かすための材料にもなるでしょう。

なお、顧客満足度調査および受講者アンケートの実施方法については、下記の記事でくわしく解説しております。無料でダウンロードいただける「研修アンケートテンプレート」も配布しておりますので、ぜひご覧ください。

■参考記事はこちら

顧客満足度を正しく計測できるアンケートとは?調査方法や回答・項目例をご紹介!

【テンプレート付】研修アンケートの主な項目や作り方のコツをわかりやすくご紹介!

 

 

効果的なホスピタリティ研修にする3つのポイント

ホスピタリティ研修を成功させるためには、受講者の理解を深め、実践につなげるための工夫が必要です。そこで最後に、効果的なホスピタリティ研修を実現するための3つのポイントを紹介します。

ポイント1.eラーニングを活用した学習環境の整備

eラーニングは、時間や場所の制約を受けずに学習できる便利なツールです。ホスピタリティ研修では、座学としてインプットさせたい基礎知識などをeラーニングに落とし込むことで、効率的な研修につなげることができるでしょう。

eラーニングシステムの導入には初期コストがかかりますが、長期的に見れば、研修にかかる時間とコストの削減が期待できます。自社の規模や予算に応じて、適切なeラーニングシステムを選択するとよいでしょう。

■参考記事はこちら

eラーニング研修のメリットやシステムの選定ポイントとは?近年のトレンドも紹介

 

ポイント2.動画教材を活用した効果的なコンテンツ作り

「百聞は一見に如かず」という言葉があるように、ホスピタリティのような実践的なスキルは、視覚的に学ぶことが非常に効果的です。そのため動画教材を活用することで、受講者の理解を促すことができるでしょう。

動画教材を活用するメリット

  • 具体的な接客シーンをイメージしやすい
  • 正しい所作や表情を視覚的に学べる
  • 言語の壁を超えて理解できる
  • 何度も繰り返し視聴できる
  • 時間や場所を選ばず学習できる

また、動画教材は上記のように多くのメリットがありますが、教材を制作する手段やコストが心配になるところでしょう。ところが、近年ではスマートフォンでも高画質な動画が撮影できるようになったため、社内で作成する企業も増えてきています。動画マニュアル制作の支援を行うサービスもあるため、プロの指導を受けながら内製化を目指したい方は検討してみてはいかがでしょうか。


ポイント3.Off-JTとOJTを組み合わせた反転学習の実施

ホスピタリティ研修を実施する際は、Off-JT(座学などの研修)とOJT(実地での研修)を効果的に組み合わせることで、学習効果を高めることができます。とくに、最近注目されている「反転学習」の手法は、ホスピタリティ研修にも非常に有効でしょう。

反転学習は、いわば「自宅でインプット、教育現場でアウトプット」の形をとる研修形態です。ホスピタリティ研修であれば、自宅でインプット(eラーニングや動画で基礎知識の学習)を行い、仕事現場でホスピタリティを実践する、という流れになります。知識と明確なイメージを持って実践に臨むことで、受講者の理解を促すことができるでしょう。

反転授業

なお、反転学習については下記の記事でくわしく解説しておりますので、ぜひ参考にご覧ください。

■参考記事はこちら

反転授業・反転学習とは?メリットや失敗しないやり方を事例をもとに解説

 

 

業界をリードする企業のホスピタリティ研修事例

上記では、ホスピタリティで有名な企業として、リッツ・カールトンをはじめ、ディズニーやスターバックスをご紹介しました。そこでここからは、この3社が具体的にどのようなホスピタリティ研修を行っているのかを見ていきたいと思います。

ぜひ、これらの事例から自社のサービス品質向上のヒントを探してみてください。

事例1.リッツ・カールトンのゴールド・スタンダード

高級ホテルチェーンとして知られるリッツ・カールトンは、「ゴールド・スタンダード」と呼ばれる独自のホスピタリティ基準を持っています。そしてこの基準は、従業員の行動指針となるクレド(信条)から成り立っています。

例えば、クレドには「お客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえする」という内容がありますが、リッツ・カールトンではこれを実現するために、従業員一人ひとりに最高2,000ドルまでの権限を与え、顧客満足のために自由に使えるようにしているのです。

そんなリッツ・カールトンでは、ホスピタリティ研修として下記のような研修を実施しています。

  • 新入社員オリエンテーション:2日間にわたり、経営理念や行動指針を徹底的に学ぶ
  • 新入社員研修:1年で300時間にわたり、ホテルの基礎知識や企業理念を学ぶとともに、顧客対応のトレーニングを行う
  • デイリーラインナップ(朝礼):毎日15~20分間、クレドの再確認や顧客サービスに関するディスカッションを行う

このようにリッツ・カールトンでは、自社の経営理念に沿った研修を行うことで、世界中で高い顧客満足度を維持しているのです。

 

事例2.ディズニーの「思いやり力」と顧客体験

ディズニーの徹底したホスピタリティは、ディズニーが愛される理由として世界的に知られています。また、ディズニーの驚くべきところは、そのテーマパークの運営を支えているスタッフのほとんどが「アルバイト」だということです。これは、ホスピタリティの素晴らしさが魅力のディズニーにおいて、教育研修の質の高さを表しているといえるでしょう。

そしてそんなディズニーでは、従業員を「キャスト」と呼び、キャストは「The Five Keys~5つの鍵~」と呼ばれる5つの行動規準に基づいて行動するよう教育されています。

The Five Keys~5つの鍵~

  • Safety(安全):ゲストにとって安全な場所、安らぎを感じる空間を作る
  • Courtesy(礼儀正しさ):すべてのゲストがVIPであり、心を込めておもてなしをする
  • Inclusion(インクルージョン):多様な人たちを歓迎し、尊重する
  • Show(ショー):キャストもショーの一部であり「ショーは毎日が初演」の気持ちを忘れない
  • Efficiency(効率):安全、礼儀正しさ、ショーを心掛け、チームワークを発揮する

この他にも、ディズニーのホスピタリティ研修では「思いやり力」の育成を目指し、OJTを中心とした実践的な研修を行うなど、キャストが日々の業務のなかで成長できる環境が整えられています。このように、ディズニーは独自の行動規準に基づいたホスピタリティ研修により、世界中で愛される存在であり続けられているのです。

 

事例3.スターバックスのおもてなし

コーヒーチェーンの大手、スターバックスも、ホスピタリティ研修に力を入れている企業の一つです。スターバックスでは、従業員を「パートナー」と呼び、お客様との関係性構築を重視した研修を行っています。

通常、飲食店では安定したサービスを提供するために、細かい接客マニュアルを設けている場合がほとんどでしょう。ところが、スターバックスでは固定化されたマニュアルがありません。

では、スターバックスの従業員がどのようにホスピタリティを実践しているのかー。それは、スターバックスが大切にする「5つの気持ち」にヒントがあります。

スターバックスが大切にする「5つの気持ち」

  • 歓迎する
  • 心を込める
  • 思いやりを持つ
  • 豊富な知識を蓄える
  • 参加する

スターバックスでは、これら5つの気持ちを基本としながら、基本的には従業員が自ら主体性をもって行動するよう教育がなされます。実際に、従業員共通のマニュアル「グリーンエプロンブック」には、決められたマニュアルの記載はなく、上記5つのヒントを体現するための具体的なアイデアが記載されているといいます。

このように、スターバックスでは従業員の行動をマニュアルで制限するのではなく、会社のビジョンやミッションを共有することで自主的なホスピタリティを実践させているのです。

 

 

まとめ

ホスピタリティ研修は単なるマナー教育ではなく、顧客満足度の向上や従業員のスキルアップに欠かせない重要な取り組みです。そこで本記事では、ホスピタリティ研修の基礎知識から具体的な手法、さらには有名企業の事例まで、くわしく解説いたしました。

また、本文中でご紹介した「eラーニング」や「動画教材を用いた研修」は、時間や場所の制約が少なく、とくに人手不足を感じている企業や、多店舗運営により体系的な研修の実施に課題を感じている企業の皆様にとって有効な選択肢となるでしょう。

研修実施の手段から逆算して研修を作り上げていくのも、一つの方法として検討してみてはいかがでしょうか。貴社のホスピタリティ研修の成功を心から願っております。

著者
『shouin+ブログ』マーケティング担当
人材育成クラウドサービス「shouin+」のマーケティング担当です。人材育成のお役立ち情報やトレンドをはじめ、企業の人事・研修担当の方向けに社内教育や研修のノウハウを発信しています。

shouin+は、本社や現場のOJT・研修に関するお悩みを丸ごと解決する人材育成クラウドサービスです。

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