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自社の教育体制が整っていないとどうなる?もたらす影響や見直すための方法を解説

ノウハウ 経営
2025.06.14
『shouin+ブログ』マーケティング担当

「教育体制が整っていない会社で働いている」「社員教育の重要性は理解しているが、どう改善すればいいかわからない」など、教育体制の整備は、企業の持続的成長と人材定着に欠かせないものです。

しかし、ゼロから教育体制を整え、社員の能力向上につなげることはそう容易なことではありません。

そこで本記事では、教育体制が整っていない会社の特徴や問題点、その影響、そして改善策についてくわしく解説していきます。自社の現状を把握し、より良い教育体制を構築するためのヒントにしていただければと思います。

 

新人が育たない?教育体制が整っていない会社の特徴

教育体制が整っていない会社にはいくつかの共通した特徴があります。こうした環境では、社員が育ちにくくなるだけでなく、組織全体のパフォーマンスも低下していきます。ここでは代表的な3つの特徴を解説しますので、自分の職場に当てはまるかチェックしてみてください。

教育体制が整っていない会社の特徴

特徴1.教育に対する価値観が低い

教育体制が整っていない会社では、そもそも「人材を育てることの重要性」に対する意識が低い傾向があります。たとえば、「新人は自分で学ぶものだ」「やって覚えろ」といった精神論が根付いている職場では、指導やフォローが後回しにされがちです。

また、経営陣や管理職が社員教育の重要性を十分に理解していないケースも多く見られます。「教育にコストをかけるよりも、即戦力を採用したほうが効率的」といった考えが当然のように存在する職場は、長期的な視点で見ると企業成長が期待できない職場といっても過言ではないでしょう。

 

特徴2.マニュアルが整っていない

教育体制が整っていない職場のもう一つの特徴は、「業務マニュアルが不十分、もしくは存在しない」ことです。業務ごとに標準化された手順書がないと、新人は業務の正しいやり方が定まらず、混乱を招きやすくなってしまうでしょう。

たとえば、同じ作業をするのに先輩Aと先輩Bでやり方が少しでも違うと、新人は「何が正解なのか分からない」「誰を信じればいいのか」と迷ってしまいます。そしてこのような不安定な状態が続くと、新人はいずれモチベーションが維持できなくなり、離職につながってしまうこともあるのです。

 

特徴3.人手や予算が足りていない

人材育成は「余裕」がなければ機能しません。教育体制が整っていない会社の多くが、人手不足や教育に割く予算の不足という根本的な課題を抱えています。現場は日々の業務で手一杯になっており、新人にかまっていられない状況が続いてしまうのです。

たとえば、教育係を任された先輩社員が、自身の業務を抱えたまま新人指導も任されると、どちらにも手が回らなくなります。その結果、「結局、新人が放置される」「教えても雑になり、ミスやトラブルが増える」といった悪循環に陥るのです。

さらに、研修プログラムを作る予算が取れない、外部講師を呼べないといったケースも多く、属人的な教育に依存する形にもなりがちです。これでは、新人の定着率やモチベーションの低下にもつながるでしょう。

 

教育体制が整っていない会社はどうなるか

教育体制が整っていない会社は、一見すると業務が回っているように見えても、内側では深刻な問題が積み重なっています。新人が成長できないだけでなく、社員のモチベーションや定着率、組織全体の生産性にも悪影響を及ぼします。ここでは、教育体制が整っていない会社がどのような影響を受けるのか、具体的な3つの視点からくわしく解説します。

教育体制が整っていない会社はどうなるか

影響1.離職率が高くなる

教育体制が整っていない会社では、社員が「成長できる実感」を持てず、不満や不安を抱えて早期に離職してしまうことが多くなります。とくに、入社直後の新人にとっては「教えてもらえない=放置されている」と感じることは、職場への信頼を失う大きな原因となります。

たとえば、業務の説明が曖昧だったり、質問しても「それくらい自分で考えて」と突き放されたりすれば、自分の居場所がないように感じてしまうでしょう。そうした不安が続くと、「ここにいても将来が見えない」「成長できないなら他の会社へ行こう」と判断するのは自然なことです。

さらには、離職が繰り返されることで既存社員にも負担がのしかかり、大きなストレスがかかることも少なくありません。このように、教育が機能していない職場は、社員の心を疲弊させ、結果的に離職の連鎖を招いてしまうのです。

 

影響2.生産性・業績が低下する

教育体制が整っていない職場では、社員一人ひとりが本来のパフォーマンスを発揮できず、結果として生産性や業績が落ち込みやすくなります。基本的な業務手順やスキルを学ぶ機会が少ないと、ミスが増えたり、非効率な働き方が常態化してしまうのです。

たとえば、新人が電話対応一つ取っても戸惑い、先輩が何度もフォローする状況が続けば、本来進めるべき業務が遅れ、組織全体のスピードが落ちます。また、教えられていないまま自己流で作業を進めると、品質のバラつきが生じてクレームや再作業が発生する可能性も高くなります。

こうした非効率の積み重ねが、やがて業績にも悪影響を及ぼします。とくに中小企業では一人ひとりの影響力が大きいため、教育不足による生産性低下は非常に深刻なリスクとなるでしょう。

 

影響3.ノウハウが蓄積されない

教育体制が整っていない会社では、社員の知識や経験が社内に蓄積されにくく、同じ問題が何度も繰り返されてしまいます。ノウハウの共有や標準化が進まないと、優秀な人材が辞めたときにその知識や技術も一緒に失われ、企業の競争力そのものが低下してしまうのです。

たとえば、ベテラン社員の「経験則」に頼っている会社では、その人が休職や退職しただけで現場が混乱することがあります。これは、個人に頼りすぎて業務の仕組みが見える化されておらず、教育の再現性がないことが原因です。

ノウハウが蓄積されていないと、新人の育成に毎回多くの時間と労力が必要となり、教育コストも上がっていきます。これでは持続可能な組織運営が難しくなり、将来的な成長にもブレーキがかかってしまうでしょう。

 

教育体制を整える上でのよくある課題

社員教育の必要性は理解していても、実際に教育体制を整えるとなると、さまざまなハードルが存在します。とくに中小企業やスタートアップ企業では、人手・時間・ノウハウの不足が障壁となりがちです。そこでここでは、教育体制を整える際によく直面する課題について、大きく3つの課題について解説します。

課題1.人手不足・コスト不足

教育体制構築の最大の障壁となるのが、人的・財政的リソースの不足です。とくに慢性的に人手不足の職場では、日々の業務をこなすことに精一杯で、社員教育に時間を割くことが難しくなっています。

実際に、厚生労働省が2018年に実施した調査でも、多くの企業において人手不足とコスト不足が人材育成におけるハードルとなっていました。

 

人材育成に関する問題点の内訳(複数回答)

人材育成に関する問題点の内訳(複数回答)

引用:「能力開発基本調査(平成30年度)」|厚生労働省

 

課題2.業務が属人化している

属人化とは、「この仕事はあの人しかできない」となっている状態です。このような状態では何をどう教えればよいのかが分からず、教育体制を構築しようとしても上手く行きません。また、特定の人にしかできない業務があると、その人が休んだり辞めたりした際に業務が止まってしまうというリスクもあります。

■参考記事はこちら

属人化とは?何が悪いのか、もたらすデメリット、原因、対策方法をわかりやすく解説!

 

課題3.教育担当者として適切な人材がいない

教育体制を整えるには、「教える側」の存在が欠かせません。しかし現実には、教える能力や意欲を持った人材が社内にいない、または誰に任せればいいのかわからないというケースが多く見られます。

実際に、「経験年数が長い=教えるのがうまい」とは限りません。仕事はできても説明が苦手な人もいれば、「教えることに興味がない」「自分の業務で手一杯」という人もいます。その結果、教育担当が固定されず、育成が場当たり的になってしまうのです。

 

教育体制を整えるためにすべき5つのこと

ここまで教育体制に関する現状や課題点などに触れてきましたが、では教育体制を整えるためには、具体的に何をどのようにしたらよいのでしょうか。ここからは、教育体制を整えるためにすべきことを、5つのポイントに絞ってご紹介いたします。

教育体制を整えるためにすべき5つのこと

①課題と目標を明確にする

まずは、現状の教育体制における「課題」と「目標」を明確にすることが必要です。どんなにリソースやマニュアルを準備しても、何を目指すのかがはっきりしていなければ教育の効果は限定的なものになってしまうでしょう。

たとえば、「新人がすぐ辞めてしまう」という課題があるなら、その原因を掘り下げて、「入社3ヶ月以内に基本業務を習得させる」などの具体的な目標を立てます。目標が定まることでやるべきことが明確になり、関係者全員が同じ方向を向いて育成に取り組めるようになるでしょう。

また、人材育成における課題や目標を明確にするには、フレームワークの活用がおすすめです。下記の記事では、人材育成で活用できる7つのフレームワークについてご紹介しておりますので、ぜひ参考にしてください。

 

■参考記事はこちら

人材育成のフレームワーク7選|使い方のポイントや注意点を解説

 

②スキルの可視化をする

社員一人ひとりのスキルを「見える化」することも、教育体制を整えるために重要なポイントです。スキルが可視化されていないと、誰が何をできて、どこでつまずいているのかが把握できず、的確な教育ができません。

たとえば、エクセル操作、接客応対、商品知識といったように、基本スキルからリストアップしていくとよいでしょう。社員ごとに到達度を記録していく「スキルマップ」を活用すれば、教育の優先順位や進捗が把握しやすくなるだけでなく、本人も成長を実感しやすくなり、モチベーションの維持や離職防止にも効果的です。

なお、スキルマップの作成においては、厚生労働省が提供している職業能力評価シートを活用するとよいでしょう。下記記事でもくわしく解説しておりますので、ぜひ参考にご覧ください。

 

■参考記事はこちら

スキル管理とは?目的や具体的な実践方法を解説

 

③マニュアルを整備する

教育体制を整えるうえで欠かせないのが、マニュアルの整備です。マニュアルは受講者側の理解を深めるだけでなく、教える側の負担軽減にもなるため、継続的な教育体制を構築するためには不可欠なのです。

またマニュアル整備の手順としては、大きく以下4つのステップに分かれます。丁寧に情報を整理しながら進めていきましょう。くわしくは下記記事で解説しておりますので、そちらを参考にご覧ください。

マニュアル整備4つのステップ

  1. 目的を設定する(5W1Hへ落とし込む)
  2. 情報を整理する
  3. 構成をつくる
  4. マニュアルを完成させる

■参考記事はこちら

マニュアル整備はなぜ必要?整備の手順とポイントを解説

 

④適切な評価制度を整える

教育体制を機能させるためには、「努力が報われる仕組み」を作ることも大切なポイントです。頑張ってスキルを習得しても、何の評価もない状態が続くと、学ぶ意欲は薄れてしまいます。

たとえば、「このスキルを習得すれば手当が出る」「目標を達成したら昇格できる」といった形で、教育成果を評価制度に組み込むことが効果的です。新人だけでなく教育担当者のモチベーションアップにもつながるため、組織全体として前向きな空気が生まれやすくなるでしょう。

なお、人事評価制度の構築には、大きく以下5つのステップがあります。くわしくは下記記事で解説しておりますので、ぜひ参考にご覧ください。人事評価の構築に活用いただける、無料のパーフェクトBOOKも配布しております。

人事評価制度構築のステップ

  1. 人事評価制度の目的と役割を全社員と共有する
  2. 等級と仕事レベルを明確にする
  3. 評価項目を作成する
  4. 等級(グレード)ごとに評価ウェイトを考える
  5. 評価をどのように処遇に反映させるか決める

■参考記事はこちら

人事評価制度を構築する方法とは?不満の原因、納得感の高い制度の特徴についてわかりやすく解説!

 

⑤育成担当者を育てる

どんなに制度やマニュアルを整えても、現場で教える「育成担当者」が不在、あるいは適切に機能していなければ、教育体制はうまく回りません。

また、育成担当者には業務知識だけでなく「人に教えるスキル」も求められます。しかし、そうしたスキルは自然に身につくものではなく、組織として育てていく必要があるものです。

たとえば、コーチングやティーチングの研修を実施したり、他の企業の育成事例を学ぶ場を設けたりするのも効果的です。育成担当者をきちんと育てていくことで、教育の質も再現性も高まり、会社全体の成長サイクルが加速していくでしょう。

なお、新人教育におけるコツや注意点に関しては、下記記事でくわしく解説しております。仕事を教えるのが上手い人の特徴やNG行動について知りたい方はぜひご覧ください。

■参考記事はこちら

新人をいちはやく育てる仕事の教え方とは?いち早く育てるためのコツや注意点を解説

 

マニュアルの在り方を見直すのも重要なポイント

教育体制を整えるうえで見落とされがちなのが、「マニュアルの質と運用方法」です。どれだけ研修制度や育成担当者を整えても、日々の業務を支えるマニュアルが不十分では、教育の効果は十分に得られないでしょう。

そこで最後に、教育効果を最大化するために知っておきたい、マニュアルのポイントについてご紹介いたします。貴社のマニュアルを見直すきっかけとしてご活用いただけましたら幸いです。

マニュアルの見直しポイント

 

新入社員でも分かる内容になっているか

効果的なマニュアルとは、どんな人が読んでも「理解できて、すぐに使える」ものであるべきです。とくに新入社員にとっては、業務知識がゼロの状態からスタートするため、専門用語が多かったり、手順が端折られていたりすると、かえって混乱してしまいます。

そのため、いま一度、下記のポイントに沿ってマニュアルを見直してみてください。すべて網羅する必要はありませんので、各要素を組み合わせながらマニュアルの有効性を高めていきましょう。

  • 専門用語を使用していないか(または専門用語に注釈が入っているか)
  • 全体の流れが分かる構成になっているか
  • 業務の目的が明確に書かれているか
  • マニュアルの保管場所が決められているか

なお、下記記事では「見やすいマニュアルのデザイン」についてご紹介しております。ぜひご一緒にご覧ください。

■参考記事はこちら

見やすいマニュアルの作り方とは?レイアウトなどのコツを7カ条にまとめてわかりやすく解説!

 

視覚的に理解できる内容になっているか

文章だけのマニュアルは、読む側にとって負担が大きく、理解にも時間がかかります。そのため、図・表・画像・スクリーンショットなどを活用し、視覚的に情報を伝える工夫が必要です。

たとえば、業務用ツールの使い方を説明する際には、実際の画面をキャプチャして手順ごとに示すだけで、読む側の理解度が格段に高まります。また、フローチャートやチェックリストのデザインを取り入れることで、業務の流れや注意点も一目で把握できるようになるでしょう。

視覚的に分かりやすいマニュアル作成のポイント

  • スクリーンショットや写真を手順ごとに掲載する
  • フローチャートで業務の流れを可視化する
  • 動画マニュアルの併用で理解度をさらに高める

視覚情報は、文字情報よりも短時間で多くの内容を伝えられるため、業務効率にもつながります。マニュアルを読むものから「見るもの」へと進化させましょう。

なお、動画マニュアルの作り方については、下記記事でくわしく解説しております。無料で活用できるツールもご紹介しておりますのでぜひ参考にご覧ください。

■参考記事はこちら

動画マニュアルの作り方とは?手順とポイント、無料のツールも紹介!

 

アップデートが定期的に行われているか

どれだけ完成度の高いマニュアルでも、時間が経てば実際の業務内容やツールは変化していくものです。古い情報のまま放置されたマニュアルを使い続けると、新人が誤った手順を覚えてしまったり、トラブルの原因にもなりかねません。

そのため、マニュアルは一度作って終わりではなく、定期的にアップデートを行うことが大切です。以下のポイントを参考に、現場の変化に対応できるマニュアルづくりを行っていきましょう。

  • 更新担当者を決めておく
  • 見直し(更新)のスケジュールを決めておく
  • 変更点を履歴として記録し、周知する仕組みをつくる
  • 現場の声を定期的に集め、改善に活かす

更新されていないマニュアルは、「読んでも意味がない」と現場から信頼を失い、誰にも使われなくなってしまいます。マニュアルは“生きたツール”として常に最新状態を保つようにしましょう。

 

まとめ

教育体制が整っていない会社は、社員の成長だけでなく、企業の未来にも大きなリスクをもたらします。とくにマニュアルは、現場での教育を支える「土台」のような存在です。

1.新人でも理解できるか、2.視覚的に分かりやすいか、3.常に最新状態が保たれているか、を意識してマニュアルを整備・運用することで、教育体制全体の質が飛躍的に向上します。

現場の「分からない」を減らし、「教える手間」を減らし、「成長できる環境」を整えるために、今こそマニュアルの在り方を見直してみてはいかがでしょうか。

著者
『shouin+ブログ』マーケティング担当
人材育成クラウドサービス「shouin+」のマーケティング担当です。人材育成のお役立ち情報やトレンドをはじめ、企業の人事・研修担当の方向けに社内教育や研修のノウハウを発信しています。

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