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OJT教育のやり方や担当者のあるべき姿とは?成功に導くポイントを具体例を交えて解説!

作成者: 『shouin+ブログ』マーケティング担当|May 31, 2022 1:00:00 AM

社員教育として多くの職場で活用されているOJT。

OJTを効果的に実施するためには、適切なやり方で実施することはもちろん、教育担当者のスキルなども重要になってきます。

しかし、実際のところ

「OJTって本当に社員教育に効果的なの?」

「教育担当者にはどのような人材が適しているの?」

「OJTを企業研修に活用するにはどうしたらいいの?」

と分からないことも多いと思います。

そこでこの記事では、OJTの概要とメリット・デメリットについて整理した後、OJT実施の4ステップおよび教育担当者のあるべき姿に関する内容まで、くわしく解説していきます。

記事の最後にはOJTにOFF-JTを絡めて効率化を図った事例もあわせてご紹介いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

OJTとはどのような教育方法なのか?

OJT(On The Job Training)とは、実務を通して行われる教育訓練のことをいいます。 一般的には、職場の上司・先輩が教育担当者となり、部下に対して業務に必要な知識やスキルを指導していきます。

たとえば流通小売店や飲食店といった職場では、新人教育としてOJTが活用できるでしょう。職場の先輩や上司が教育担当として、新しく入った社員やアルバイトを店舗内で実務にあたりながら指導していきます。

■参考記事はこちら

OJTとは?実施時の注意点や必要な準備についてわかりやすく解説!

 

OJTとOFF-JTとの違い

職場での実務を通して行われるOJTに対し、職場外での実施が基本となる「OFF-JT」という教育訓練方法があります。

OFF-JT(Off The Job Training)は、職場外で実施される講義形式の研修(集合研修や外部セミナーなど)を指し、主に理論・原理といった基礎教育を目的とした教育訓練です。

そして、これら2つの教育訓練の違いは下表のようになります。簡単にまとめると、OJTはアウトプット型の教育訓練、OFF-JTはインプット型の教育訓練といえるでしょう。

OJTとOFF-JTの違い

 

OJT

OFF-JT

目的

知識のアウトプット

知識のインプット

場所

職場内

職場外

期間

中長期(3ヶ月〜1年)

短期(1日〜3日)

内容

実務に直結するノウハウ

受講者全員に対する標準的なノウハウ

柔軟性

個人に適した細やかな指導がしやすい

多数の受講者を相手にすることが多く柔軟性には欠けるが、その分知識やスキルのばらつきを防ぐことができる

コスト

時間的コストが大きい

(教育担当者の負担が大きい)

経済的コストが大きい

(会場費、講師報酬、交通費など)

コミュニケーション効果

高い

(マンツーマン指導によりコミュニケーションが発生しやすい)

低い

(指導者から受講者への一方的な講義になりやすい)

なお、OJTとOFF-JTの違いについてさらにくわしく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

■参考記事はこちら

OJTとOFF-JTの違いとは?それぞれのメリット・デメリット、活用方法について解説

 

OJTを職場教育に活用する3つの目的

厚生労働省が令和3年度に実施した調査によると、正社員または正社員以外に対して計画的なOJTを実施した事業所は全体の約6割にのぼっています。

職場教育でOJTが活用される理由はいったいどこにあるのでしょうか。ここでは、OJTを実施する目的を3つのポイントに絞って見ていきましょう。

計画的なOJTの実施状況

参照:厚生労働省「令和3年度『能力開発基本調査』」

 

教育研修の効率化

OJTを職場教育に活用する目的のひとつ目は、教育研修の効率化です。

ダイヤモンド社人材開発編集部による書籍『OJT完全マニュアル 部下を成長させる指導術』によると、「人は経験から学び成長する」とあります。

受講者は、ベテランスタッフによる指導を実務を通して受けることで、そのノウハウや技術を効率的に学ぶことができるのです。そのため、小売店や飲食店、介護現場などさまざまな職場でOJTは取り組まれています。

 

定着率の向上

OJTを職場教育に活用する目的のふたつ目は、定着率の向上です。

厚生労働省が実施した調査によると、計画的なOJTやOFF-JTを実施している事業所では、従業員の離職率が低い傾向にあると報告されています。

これは、OJTにより新入社員と教育担当者のコミュニケーション機会が増えることで、新入社員が職場に馴染みやすくなるためだと考えられます。

計画的なOJTの実施と離職率との関係

参照:厚生労働省「第2-(2)-5図 能力開発の実施と従業員の離職率との関係

OJT教育は、必ずしも教育に関する目的をもつだけでなく、新入社員の不安要素を取り除き職場への定着を促すといった目的もあるのですね。新入社員の離職率の高さが課題視される現代において、その解決への糸口の一つはOJTにあるのかもしれません。

なお、定着率については下記の記事にて、その概要から計算方法、定着率向上の方法までくわしく解説しています。気になる方はぜひ参考にご覧ください。

■参考記事はこちら

定着率とは?業種別の平均や目安、上げる方法や重要ポイントまでわかりやすく解説!

定着率の計算方法とは?業界別の平均と目安や離職率との違いについてわかりやすく解説!

 

教育担当者のスキル向上

OJTを職場教育に活用するのは、必ずしも受講者(新入社員など)のためだけではありません。

ドラッカーの言葉に「他人の育成を手がけないかぎり、自分の能力を向上させることはできない」というものがあります。(引用:ドラッカー.P.F 有賀裕子訳『マネジメント:務め、責任、実践』)

OJTの教育担当者は、新人の成長の場に直面するなかで、さまざまな気づきを得ることができます。業務をかみ砕いて説明する伝達能力や、やる気にさせる言葉のかけ方などを工夫するため、教育担当者にとっての自己成長につながるのです。

また、指導方法を共有することで、職場全体で人を育てようという風土も作られていくでしょう。

 

OJT教育のメリット・デメリット

OJT教育が職場教育に活用される理由には、次にあげる4つのメリットが大きく関わっています。ここではOJT実施のメリットを中心に、デメリットもあわせて見ていきましょう。

OJT教育4つのメリット

メリット1.個人に合わせた指導ができる

1対1での教育が基本となるOJTでは、受講者個人に合わせた細やかな指導ができる点が最も大きなメリットといえるでしょう。受講者の性格に合わせた言葉がけやサポートなど、直接的に指導に関わらない部分においても柔軟に対応できるのもいいですね。

メリット2.経済コストが低い

OJTの実施にあたっては、社内の人材が教育担当者となって指導を行います。そのため、一般的な外部セミナーや集合研修といった教育方法に比べると、社内で完結する分コストがかからないのがメリットといえるでしょう。

メリット3.教育担当者の成長を促せる

OJTの目的としても述べましたが、OJTの実施は受講者の成長だけでなく教育担当者の成長も同時に促すことができます。自身の知識や経験を振り返り整理する良い機会になったり、時には間違えて覚えていたことに気づける機会になったりすることもあるでしょう。

メリット4.人間関係を築きやすい

1対1での教育が基本となるOJTでは、受講者と教育担当者(社員同士)のコミュニケーション機会が自然と増えることで、人間関係を築きやすくなるメリットがあります。受講者としても、分からない時に質問をする相手が決まっている(誰に聞けばいいのかを悩む必要がない)点や、すぐに教えてくれる人がいる点が安心感につながるでしょう。

 

OJT教育2つのデメリット

デメリット1.中長期的な指導計画が必要

OJTの実施期間は一般的に3ヶ月〜1年と中長期的になるため、綿密な指導計画が必要になります。そのため、慢性的に人手不足の職場やOJT経験者の少ない職場などでは、指導計画が十分に立てられず効果的なOJTにつながらないことがあります。

デメリット2.教育担当者にかかる負担が大きい

OJT実施にあたっては、受講者一人に対して教育担当者を一人配置し、手厚く指導を行っていくのが基本となります。そのため、教育担当者は指導のために時間や労力を割く必要があり、個人にかかる負担が大きくなってしまうのです。OJTを実施したくても実現できない企業があるのは、この理由が大きく関わっていると考えられます。

 

OJTのやり方~4ステップ~

それでは、ここからはOJT実施のための具体的な方法を見ていきましょう。OJTのやり方は、主に次の4ステップに分かれます。それぞれ見ていきましょう。

 

ステップ1.やってみせる(Show)

OJTの第1ステップは「やってみ見せる(Show)」ことです。教育担当者が実演して見せることで、受講者は業務の全体像をつかんだり、具体的なイメージをすることができるようになります。

ステップ2.説明する(Tell)

OJTの第2ステップは、「説明する(Tell)」こと。ステップ1でやってみせた業務についてその業務の目的や意味を伝え、業務に対する理解を深めてもらいます。このとき、業務の達成目標も同時に伝えると、受講者はより具体的なイメージをもって業務を進めることができるようになるでしょう。

また、人事コンサルタントの松下直子氏は、自身の著書のなかで「説明は易しい言葉を用いることが大切だ」と述べています。OJTを進めるうえでは、ぜひ伝え方にも気を配ってみてください。

 

ステップ3.やらせてみる(Do)

OJTの第3ステップは「やらせてみる(Do)」こと。ステップ1&2でつかんだイメージをもとに、実際に自分の手を動かして体験をしてもらいます。やってみることで、「意外と難しい」「ここに注意しながらやるべきだ」などと新しい発見があることでしょう。

なお、松下直子氏は前述した著書のなかで「『わかる』を『できる』に変換するには経験というプロセスが必要だ」と述べています。OJTの受講者にはより多くの経験を積んでもらい、「できる」という感覚が養われるようサポートしてあげましょう。

 

ステップ4.評価・指導をする(Check)

OJTの最終ステップは「評価・指導する(Check)」ことです。ステップ3での結果をもとに、良かったポイントおよび改善すべきポイントを伝えましょう。

伝え方としては、「どこが良かった(悪かった)のか」「なぜ良かった(悪かった)のか」「どう改善すればよいのか(具体的に)」を明確に伝えるのがコツです。

また、指導を行う上では、叱ることよりも「褒める」ことを意識するとよいでしょう。叱るよりも褒める方が人の能力を引き出す効果が高いことは、あらゆる研究で明らかになっている事実です。

■参考記事はこちら

OJTを従業員教育で活用するには?具体的な手法と成功するメソッドをわかりやすく解説!

 

OJTを成功に導く3つのポイント

上記ではOJTのやり方について4つのステップでご紹介しましたが、OJTを成功させるためにはさらにいくつかのポイントがあります。より効果的にOJTを実施するためにも、ぜひ実践してみてください。

ポイント1.教育計画を立てる

OJT教育のポイントの1つ目は、教育計画を立てることです。教育計画を立てずにOJTを進めてしまうと、受講者はOJTの明確な目的やイメージが持てずに効果が薄れてしまうことも。OJTを実施する際は、次にあげるコツを参考にぜひ計画を立ててから実施してください。

OJTの教育計画を立てるコツ

  • 目標となる人物像(イメージ)を立てる

→社会人としてのマインドやスキルはどの程度備わっていてほしいか、担当業務の知識やスキルはどの程度備わっていてほしいか、など

  • 目標から逆算し、中期(途中)目標を立てる
    例)6月末にはこの業務を一人でこなせるようになってほしい、など

 

ポイント2.評価基準を明確に設ける

社員のモチベーション維持に欠かせない、評価制度。OJTを進める上では“適切な評価を行っていくこと”が大切なポイントとなりますが、これには明確な評価基準が必要不可欠です。

評価制度の設計については、人事評価の使用目的から考えて、評価項目や実際の評価の仕方について決めていきますが、くわしくは下記の記事にて解説していますのでぜひ参考にご覧ください。

■参考記事はこちら

人事評価の基本的な手順とは?評価制度設計から評価シートの例文までわかりやすく解説!

なお、前述した書籍『OJT完全マニュアル』において、「さまざまなタイミングでフィードバックを行うことでこまかく業務体験を振り返ることができ、振り返りから学びが生まれて、成長につながる」と述べられているように、フィードバックは受講者にとって貴重な成長機会です。

そのため、定期的に実施される人事評価に加えて、OJTの教育担当者によるフィードバックの機会も適度に設けるとよいでしょう。日報を用いた日々の業務の振り返りに加えて、週単位や月単位、一つの業務の区切りのタイミングなどでフィードバックの機会を設けてみてはいかがでしょうか。

 

ポイント3.OJTの前にOFF-JTを実施する

OJTをより効果的に実施するための方法として、OJTの前にOFF-JTを実施するというものがあります。これは反転学習という学習方法にならったやり方で、事前にインプットをし、現場でアプトプットすることでより高い学習効果が期待できるというものです。企業研修との親和性も高く、できる限り取り入れたい研修方式といえます。

企業研修で反転学習を取り入れる5つのメリット

  1. 個人の労働状況に応じた柔軟な学習ができる
  2. 理解度を確認しやすい
  3. 社員のスキル平準化に役立つ
  4. コミュニケーションを促せる
  5. 教える側のスキル・負担なく実施できる

なお、反転学習の概要や実施方法については下記の記事でくわしく解説しています。ぜひ参考にご覧ください。

■参考記事はこちら

反転授業とは?研修に導入するメリットや失敗しない実践方法について、事例からわかりやすく解説!

 

OJT教育担当者のあるべき姿とは?

ここまでには、OJT実施に役立つ知識やポイントについてご紹介してきました。

しかし、いざ自分が教育担当者の立場になってみると、「自分に教育担当者が務まるのだろうか」「教育担当者として、どのように指導を行っていくべきだろうか」と、不安に感じてしまうこともあるかと思います。

そんな時、あらかじめOJT教育担当者のあるべき姿を理解しておけば、それが道しるべとなって不安を和らげてくれることでしょう。ここでは、教育担当者としての心構えや必要なスキル・役割についてご紹介しますので、ぜひOJT教育担当者になられた方・教育担当者への指導としてご活用ください。

 

OJT教育担当者に必要な心構え

書籍『事例で学ぶOJTー先輩トレーナーが実践する効果的な育て方』では、OJTの教育担当者の心構えとして次の2点をあげています。

  • 自身のキャリア観を意識する
  • 自社の支援制度を把握しておく

OJTの教育担当者は、受講者の成長をサポートする、いわば“伴走者”です。受講者のキャリア開発を行うために、まずは自身のキャリアプランを持っていなければ、受講者の支援を行うことは非常に難しいでしょう。

また、自社の学習支援制度について把握しておくことも教育担当者として大切なポイントです。受講者の学習意欲が見えたときに適切なアドバイスを行うことができれば、経済的な理由から学習を実施できなかった、なんてことも起こらずに済みます。

 

OJT教育担当者の役割と求められるスキル

OJT教育担当者の3つの役割と、求められる4つのスキルについて解説します。

OJT教育担当者の3つの役割

OJT教育担当者には、次にあげる3つの役割があります。

  • 受講者に責任感を持たせる
  • 受講者をやる気にさせる
  • コミュニケーション力をつけさせる

社会には、守るべき約束やルールがあります。約束した納期を守らなければ、相手に損害を与えることになるだけでなく、会社としての信用を失うことも。そのためOJT教育担当者は、受講者に業務の責任について理解を促す役割があります。

また、サイバーエージェントの人事部で社員教育に従事していた曽山哲人氏の著書によると「新入社員はもともとやる気と意欲を持っていて、自信を持たせることでやる気を引き出すことができる」といいます。後述しますが、「褒める」というスキルを上手く活用して受講者のやる気を引き出すのも、OJT教育担当者の役割といえるでしょう。

さらにOJT教育では、社会人としてのコミュニケーションについても指導することが求められます。とくに新入社員の中には「やばい」「まじで」などの社会人としては不適切な言葉を用いる人がいるほか、尊敬語・謙譲語を誤用する人も少なくありません。

コミュニケーションの違和感は、仕事にも悪影響を与える恐れがありますので、教育担当者として丁寧に指導していきたいところです。

OJT教育担当者に求められる4つのスキル

OJT教育担当者には、次にあげる4つのスキルが求められます。

OJT教育担当者は、受講者に対してコミュニケーション指導の役割を担うため、自身のコミュニケーション力が必要なのは言うまでもありません。

また、受講者のやる気を引き出すために、“褒める”ことと“叱る”ことを上手く使いこなすスキルも重要になります。書籍「OJT完全マニュアル」で述べられている、効果的な褒め方をご紹介しましょう。

効果的な褒め方のポイント

  • 具体的に褒める
    (どこが良かったのか、何が伸びたのかを正しく認識させる)
  • 才能よりも努力をほめる
  • その場で褒める
    (すぐに褒めることで行動の定着を図る。時間が経つと本人の意識が薄れ効果は小さくなる)

 

参照元:松尾睦監修 ダイヤモンド社人材開発編集部 「OJT完全マニュアル 部下を成長させる指導術」を参考に弊社で作成

褒め方とは対照的な“叱り方”については、同書籍によると「短く端的に叱る、一対一のときに叱る」ことがポイントだといいます。とくに、感情にまかせた“怒り”になってしまうと、受講者はやる気を失い、成長の機会を奪うことになるため注意が必要です。叱ったあとのポジティブな言葉がけ(期待しているよ、など)を意識するとよいでしょう。

最後に、OJT教育担当者としては、業務のフィードバックスキルも備えておきたいところです。効果的なフィードバックは受講者の成長を促すだけでなく、モチベーションの向上などあらゆるメリットをもたらします。くわしくは下記の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。

■参考記事はこちら

フィードバックとは?言葉の意味や有効なフレームワークについてわかりやすく解説!

 

OJT教育担当者に選ばれる人の特徴

OJT教育の成功は、教育担当者の資質に影響されます。ではどのような人材がOJTトレーナーに選ばれるのでしょうか。

特徴1:成長支援に興味がある

前述した書籍『事例で学ぶOJTー先輩トレーナーが実践する効果的な育て方』の中では、OJTの教育担当者になる人の属性に関して次のように述べられています。

OJTトレーナーになる人は、「自らの成長に関心が高く、他者の成長支援に興味がある」ことが大前提です。そういう人をOJTトレーナーに任命すれば、若手社員の成長も上手に支援していくはずです。もし自分の成長に関心が薄く、さらに他者の成長にも興味のないOJTトレーナーが任命されてしまうようでは、新入社員の成長にもよい影響を与えないでしょう。

引用:田中淳子著(2021)『自らの成長に関心が高く、他者の成長支援に興味がある』経団連出

特徴2:熱量がある

新人の成長を期待し、諦めない熱量のある人は、OJT教育に適しているといえます。

実際に、北海道大学教授の松尾睦氏の研究によると、育て上手のマネージャーには「若手の成長可能性を信じて期待する」「共に考えることで若手の内省を促す」「仕事の方法を改善することで成果につなげる」という3つの共通点があり、とくに1つ目の成長の可能性を信じる「成長期待」が重要だと述べられています。

引用元:松尾睦氏「育て上手のマネジャーの指導方法 ─若手社員の問題行動と OJT」

人は、期待されることでモチベーションが上がり、学習成績や仕事の業績が向上することがあります。これは「ピグマリオン効果」といわれる心理効果によるものですが、OJTの教育担当者としても新人の成長を信じて教育に携われる人が、OJT教育における人材育成に相応しいといえるでしょう。

 

事例紹介

では最後に、OJTに関する事例を見ておきましょう。今回は、OJTにOFF-JTを絡めて効率化を図った事例を2つご紹介します。

株式会社ユナイテッドアローズの事例

紳士服・婦人服および雑貨等の商品を販売するセレクトショップを展開する、大手アパレル会社の株式会社ユナイテッドアローズ。この会社の社員教育では、OJTとOff-JTを組み合わせた研修を実施しています。

具体的には、OJT実施前にクラウド型eラーニングサービスを活用したOFF-JTを実施し、接客の基礎や会社の理念に関する内容を、動画やPDFといったデジタルマニュアルを用いてインプットします。そしてOFF-JTの後、WEB会議ツールを活用したリアルタイム講義を行い、知識を習得した上で店舗でのOJTに移行する、といった形式です。

すると、効果的な学習方式によって接客スキルの底上げに成功。接客レベルは、その目標値に対する達成率を比較すると、例年の約2.5倍向上したそうです。

 

株式会社きちりホールディングス

株式会社きちりホールディングスは、レストラン経営における飲食事業等を行う会社です。

この会社では、2,000名を超える飲食店従業員に対して、現場でのOJTに加えてクラウド型eラーニングサービスを活用したOFF-JTを導入しています。

OJTだけで社員教育を実施していた頃は、知識が人伝いの伝言ゲームになるなど間違った認識で理解が進んでいた場面も多かったそうですが、OFF-JTを同時に実施するようになってからは正解をマニュアル(動画)で確認できるようになり、それらの悩みも解消されたようです。

実際に現場からは、「『なみなみスパークリングの注ぎ方』の動画を使ったパートナーの研修を行いました。動画を使うことで今まで勘違いしていた部分の修正も行え上手く注ぐことが出来るようになりました。動画を使うことで分かりやすくムラの無い研修を行うことができると感じました。」との声もあがっているそうです。

 

株式会社オンリー

株式会社オンリーは、ビジネスウェアを全国で約60店舗運営している会社です。

この会社では、OJTメインの指導により人材育成が各店舗に依存してしまうことを課題として抱えていました。同時期入社の社員でもスキルに差が出てしまったり、マニュアルとはコトナル.異なる方法で業務を覚えてしまったりしていたのです。

そこで、解決策として動画コンテンツ(マニュアル)によるOFF-JTを導入。これにより、社員一人ひとりに同じ内容で指導ができるようになったほか、学習状況の把握がしやすくなったことで個々に合わせて足りない部分や間違っている部分の指摘ができるようになったそうです。

こうして、株式会社オンリーではOFF-JTとOJTをうまく組み合わせることでスキル平準化を実現しました。

 

まとめ

社員教育として多くの職場で活用されているOJT。今回は、OJTの教育担当者向けに、OJTの概要からそのメリット・デメリット、OJT実施の4ステップまでくわしく解説いたしました。

OJT実施においては、適切なやり方や効果的にOJTを実施するためのポイントはあるものの、やはり重要なのは「他者の成長支援に興味をもち、成長を期待すること」だと考えます。OJTは、受講者だけでなく教育担当者の成長を促す場でもあるため、自身の成長機会だと考えて前向きに取り組むとよいでしょう。

なお、記事の最後にはOJTにOFF-JTを絡めて効率化を図った事例もあわせてご紹介しておりますので、ぜひ貴社のOJT教育にお役立てください。