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新人教育をOJTで行う理由とは?近年の新入社員の特徴や陥りがちな失敗もあわせて解説!

作成者: 『shouin+ブログ』マーケティング担当|Aug 9, 2022 7:39:00 AM

新人教育の一環として実施されることの多い「OJT」。

ところが、「OJTの効果が感じられていない」、「新人教育としてのOJTがうまく行かない」といった悩みを抱えている方も少なくないのではないでしょうか。

そこでこの記事では、接客業を中心とした業態の新人教育で実施することの多いOJTを成功させる方法について、くわしく解説していきたいと思います。新人教育の課題点からOJTの失敗ポイント、成功ポイントまで細かくご紹介いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。なお新人教育の基本に関しては以下の記事で解説していますので、そもそも新人教育ってどういうことをすればいいの?といった基本的な疑問をお持ちの方は、あわせてお読みください。

■参考記事

新人教育とは?成功させるためのポイントやよくある失敗例についてわかりやすく解説!

 

そもそもOJTとは?

OJT(On The Job Training)とは、実務を通して行われる教育方法のことです。OJTでは職場の上司や先輩が、新人や業務未経験者に対して、実務を通じながら指導を行っていきます。また、実践的な教育方法であるOJTに対し、集合研修や外部セミナーのような現場から離れた場所で行われる教育方法を「Off-JT」と呼びます。OJTやOff-JTについては以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてお読みください。

■参考記事

OJTとは?実施時の注意点や必要な準備についてわかりやすく解説!

Off-JTとは?実施するメリットや方法を事例からわかりやすく解説!

OJTとOFF-JTの違いとは?それぞれのメリット・デメリット、活用方法について解説

 

OJTを実施する目的と効果

OJT実施には、主に次の4つの目的と効果があります。

1.個人に合わせた指導・教育

OJTでは受講者1人に対して教育担当者を1人配置することで、1対1の指導が可能です。個人の性格や特性に合わせた教育担当者の人選から、個人のスキルや成長に合わせた指導方法まで、丁寧に個人と向き合うことができます。

 

2.人間関係の構築

新人にとって、職場の人間関係は非常に大きな意味を持ちます。人間関係の良し悪しによって、仕事へのモチベーションが上がることもあれば、逆に強いストレスとなり仕事に力が入らなくなってしまうこともあることでしょう。

実際に2019年に株式会社ジャストイットが社会人1年目の男女100名を対象に実施した調査では、社会人1年目の仕事の悩みランキングの第2位に「人間関係がうまくいかない」が上がっています。3位にも「いつも上司や先輩に怒られる」がランクインするなど、新人社員にとって職場の人間関係がいかに重要であるかが理解できます。

その点OJTでは、新人社員と上司の関わりを積極的に促し、コミュニケーションの機会を創出できるでしょう。

 

3.社員の定着率向上

適切な新人教育は、早期離職の防止にも効果があります。

厚生労働省のデータによると、平成30年の新規大学卒就職者のうち31.2%、新規短大卒就職者のうち41.4%が3年以内に離職すると報告されています。また、定着率低下の原因としてはしばしば職場の人間関係が理由に上がることも。

そのため、OJTによって新人社員が職場に馴染みやすい環境を生み出すことが定着率向上につながるのです。

(参照:内閣府「特集 就労等に関する若者の意識|平成30年版子供・若者白書(概要版)」をもとに弊社で図を作成)

 

■参考記事

定着率とは?業種別の平均や目安、上げる方法や重要ポイントまでわかりやすく解説!

 

4.指導者のスキルアップ

OJTによる新人教育は、指導者のスキルアップといった面からもメリットがあります。

新人に指導をするために作業手順を振り返ることから、言語化し分かりやすく伝えることなど、指導者側にはあらゆる工夫が求められるからです。

マネジメントの父と呼ばれる経済学者のドラッカーも「他人の育成を手掛けない限り、自分の能力を向上させることはできない」という言葉を残しています。

 

企業におけるOJTの実施状況

厚生労働省による平成30年度「能力開発基本調査」の結果において、正社員または正社員以外に対して計画的なOJTを実施した事業所は65.3%であると報告されました。また、そのうちの55.7%の事業所にて、新人社員を対象としたOJTが実施されていることも明らかになっています。

計画的なOJTの実施状況

参照:厚生労働省「能力開発基本調査(平成30年度)」

 

一方、独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した調査では、企業が取り組んでいるOJTの内容として「とにかく実践させ、経験させる(59.5%)」が第一位に挙げられています。次いで、第二位が「仕事のやり方を実際に見せている(55.2%)」、第三位が「仕事について相談に乗ったり、助言している(50.8%)」という結果に。

とくにこの中でも、OJTが【うまくいっている企業】と【うまくいっていない企業】で違いが最も大きかった実施内容が「仕事について相談に乗ったり、助言している」であり、二者の間には13.7%もの実施率の差が見られたそうです。

 

日常の業務のなかで、従業員に仕事を効果的に覚えてもらうために行っている取り組み

参照:独立行政法人労働政策研究・研修機構「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」

 

企業における新人教育の課題

ここからは、新人教育における課題について見ていきましょう。先ほどご紹介した厚生労働省による「能力開発基本調査(平成30年度)」をもとに解説していきます。

 

企業における新人教育の課題

  1. 指導する人材・時間が確保できない
  2. 新人がすぐに辞めてしまう
  3. 新人が打たれ弱い

くわしく見ていきましょう。

 

課題1:指導する人材・時間が確保できない

厚生労働省の調査結果から分かるように、多くの企業において指導する人材の確保は大きな課題となっています。

人材育成に関する問題点の内訳(複数回答)

参照:厚生労働省「能力開発基本調査(平成30年度)」

 

教育担当者にとっては、自身の通常業務に上乗せされる形で時間を確保する必要がある上、指導のためのスキルも求められます。元より人手不足が深刻化している現場では、さらなる負担がかかることを懸念し、新人教育の実施を見送ることもあるでしょう。

ところが、新人教育の形は必ずしもOJTだけではありません。場合によっては、新人教育のアウトソーシング(外部講師によるOff-JT、eラーニング研修の活用など)を検討してみるのも一つの手です。

 

課題2:新人がすぐに辞めてしまう

「新人の定着率の低さ」についても、企業にとって大きな課題となっています。厚生労働省の調べでは、新卒大学生のうちの約3割が就職後3年以内に離職していることが分かっています。

引用:厚生労働省「新規学卒者の離職状況」

また、新卒採用にかかる費用は採用者1人あたり平均約29.4万円との報告もあることから、いかに新人の定着率の悪さが企業にとって大きな損失であるかが理解いただけるでしょう。

少子化による影響で、今後はより少ない人材を多くの企業で取り合うことになり、人材確保の難易度はより一層難しくなっていくと予想されます。今一度、新人の定着率に目を向け「選ばれる企業づくり」「働き続けたいと思える企業づくり」に注力していくことが必要とされているのです。

なお、定着率向上のポイントについては以下の記事でくわしく解説しています。ぜひ参考にご覧ください。

■参考記事

定着率とは?業種別の平均や目安、上げる方法や重要ポイントまでわかりやすく解説!

 

 

課題3:新人が打たれ弱い

「新人が打たれ弱くて叱りづらい」「叱るとすぐに辞めてしまう」

実際、このような話題を耳にしたり、自分自身で感じたりしたことがあるという方は少なくないはずです。

厚生労働省の調査結果にある「鍛えがいのある人材が集まらない」という人材育成における問題点も、このような意味合いを持つものと考えられます。

しかし、課題の本質は本当に「新人が打たれ弱いこと」でしょうか?一部上場企業の人材開発および人材採用を手がける中尾ゆうすけ氏の著書では、上記のような課題に対し次のように述べています。

これらの原因は、システムやお金にあるのではありません。実は、すべて人に起因し、人によって引き起こされている問題です。人によって起こった問題は、人によって解決するしかありません。新入社員教育を効果的に行なえば、新入社員は学生から本当の意味での社会人へと変貌し、さまざまな能力を身につけ、成長します。成長を感じ、やりがいを見つけた新入社員は、簡単には離職しません。

(引用:中尾ゆうすけ著(2010)『人材育成の教科書 自分で考え行動できる新入社員の育て方』こう書房)

新人社員の在り方に課題があると感じられる場合は、一度「新人教育の在り方」を見直してみる必要があるかもしれません。以下の記事では、新人教育の基礎基本について、くわしく解説していますので、ぜひ参考にご覧ください。

■参考記事

新人教育とは?成功させるためのポイントやよくある失敗例についてわかりやすく解説!

 

近年の新人社員の特徴

近年の新人社員は、1996年〜2010年頃に生まれた「Z世代」と呼ばれる世代に当てはまります。生まれたときからスマートフォンやパソコンといったデジタルデバイスが身近にあり、TwitterやInstagram、YouTubeといったソーシャルメディアにも幼い頃から慣れ親しんでいる世代です。

そして当然ながら、Z世代の新人社員の上司にあたるような現在の40〜50代の方々とは育った環境が大きく違い、考え方や価値観も大きく異なります。新人社員教育を成功させるためにも、まずはZ世代の特長から知っていきましょう。

ここでは、一般社団法人日本能率協会により調査された「2020年度 新入社員 意識調査報告書」をもとに解説していきます。

近年の新人社員の特徴

  1. 仕事の目的は「やりがいや充実感を得ること」
  2. 理想の上司は「丁寧な指導をする上司・先輩」
  3. 転職を考えるのは「職場の人間関係が悪いとき」

くわしく見ていきましょう。

 

特徴1:仕事の目的は「やりがいや充実感を得ること」

同調査において「自身の働く目的」について質問をしたところ、回答のトップは「仕事を通じてやりがいや充実感を得ること(52.8%)」でした。過半数の回答が得られたこと、また前年比では約10ポイントの上昇がみられたことから、Z世代の仕事に対する価値観がうかがえます。

「あなた自身の働く目的は何ですか。お金を得ること以外でお答えください。」

引用:日本能率協会「2020年度 新入社員 意識調査報告書」

 

特徴2:理想の上司は「丁寧な指導をする上司・先輩」

同様に「理想の上司・先輩像」について質問をしたところ、回答のトップは「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩(59.3%)」という結果に。

第二位には「仕事の結果に対するねぎらい・褒め言葉を忘れない上司・先輩(33.2%)」もあがっていることから、Z世代は上司に対して丁寧な指導や精神面でのフォローを求めていると考えられます。

「理想の上司像について」

引用:日本能率協会「2020年度 新入社員 意識調査報告書」

 

特徴3:転職を考えるのは「職場の人間関係が悪いとき」

同調査では、新人社員が「転職を考えるシチュエーション」についても調査を実施しており、そのシチュエーションとして最も多く回答を集めたのが「職場の人間関係が悪いとき」でした。

全体の84.7%の新人社員が「そう思う(転職を考える)」と回答し(「とてもそう思う(41.4%)」と「ややそう思う(43.3%)」の合算)、Z世代の新人社員がいかに職場の人間関係を重要視しているかがうかがえます。

転職を考えるシチュエーションについて:職場の人間関係が悪いとき」

引用:日本能率協会「2020年度 新入社員 意識調査報告書」

なお、Z世代についてはこちらの記事でよりくわしく解説しています。ぜひ参考にご覧ください。

■参考記事

Z世代とは何歳から?特徴やこれまでの世代との違い、効果的な研修方法についてわかりやすく解説!

 

 

新人教育のOJTで陥りがちな失敗

ではZ世代の新人社員の特徴について理解いただけたところで、次に新人教育(OJT)で陥りがちな失敗ポイントをご紹介していきます。

Z世代の新人相手に「どうしたら失敗せずに済むか」も合わせて解説していきますので、ぜひ参考にご覧ください。

新人教育のOJTで陥りがちな失敗

  • 学生意識が抜けない
  • 新人が何を考えてるか分からない

くわしく見ていきましょう。

 

学生意識が抜けない

「新人が毎朝遅刻をしてくる」「新人が研修中に居眠りをする」

みなさんは、このような新人に対して「社会人としての意識が足りない」と感じたことはありませんか?

学生気分が抜けず、社会人としての意識が足りない新人は比較的存在しますし、入社後に周囲の人間が指導を行ってもなかなか改善が見られない、なんてこともよくある話でしょう。

では、こういった事態を避けるにはどのような方法があるでしょうか。前述した中尾ゆうすけ氏の著書では、これらの課題に対し解決策として「内定者教育」を提案しています。また、とくに内定者教育の中で取り入れるべきものとして次のように紹介しています。

いちばん良いと思うのは、レポートです。テーマに沿ったレポートを書かせ、そのフォローを確実に行なうことで、社会人の常識レベルを、あなたから伝えていくことができます。こうして内定期間中から常識のレベルを少しずつ上げていき、3月末には社会人としての意識にまでもっていきます。

 

新人が何を考えてるか分からない

「新人が物静かなタイプで、何を考えているか分からない」「新人が素直でなく、分からないことを質問してこない」このように、新人に対して「何を考えているか分からない」と感じたことはありませんか?

実際、ダイドー働く大人力向上委員会が2014年に実施した「社会人の職場コミュニケーションに関する意識調査」では、新人社員に対して不安に感じる点として「何を考えているかわからなそう(40%)」がトップに挙がっています。

(参照:ダイドー働く大人力向上委員会「社会人の職場コミュニケーションに関する意識調査」)

 

ではなぜ、このような事態が頻繁に起こってしまうのでしょうか。中尾ゆうすけ氏は、この課題に対する原因とその解決策として、前述した著書で次のように述べています。

悩みとは自分の弱い部分ですから、信頼できない人にそれを見せるのは、誰でも嫌です。そんな当たり前のことが、意外にわかっていない人が多いのです。

それではまず、あなたがするべきことは何でしょうか?それは、あなたが「信頼できる人」「尊敬できる人」になることです。そうすることで、悩みを打ち明けられるような存在になるのです。

「新人が何を考えているか分からない」そう感じたときは、まずは新人とのコミュニケーション、そして自身が上司として上記のような人になれているか、見つめなおす必要がありそうです。

 

新人教育をOJTで成功させるためのポイント

それでは最後に、新人教育(OJT)を成功させるためのポイントを3つご紹介いたします。

新人教育をOJTで成功させるためのポイント3つ

  1. 教育に一貫性をもたせる
  2. コミュニケーションの取り方
  3. 報告会で発表させる

くわしく見ていきましょう。

 

1:教育に一貫性をもたせる

新人教育には、人事部門の人間だけでなく、教育担当者や配属先の上司、社長などといった多数の社員が関わっています。

このような中、「社長が内定式で話していた企業理念と、教育担当者から教わった行動指針がズレている…」のような事態になれば、新人社員が困惑するのも無理はありません。教わった社員や会社に対する信頼も揺らぎかねないでしょう。

そのため、新人教育には必ず「一貫性」が必要です。人事部門や教育担当者といった教育をマネジメントする側の人間は、あらかじめ企業理念や社長訓示といったものに目を通しておくと良いでしょう。

 

2:コミュニケーションの取り方

前述した一般社団法人日本能率協会による「2020年度 新入社員 意識調査報告書」の中では、Z世代が求めるコミュニケーションの取り方として下表のように結果が出ています。

引用:日本能率協会「2020年度 新入社員 意識調査報告書」

 

まとめると、Z世代の新人社員は次のようなコミュニケーションを求める傾向にあるといえます。

  • 本音を率直に言われることよりも、気遣いのある言葉選びを求める
  • 広く浅い人付き合いよりも、狭く深い人付き合いを好む
  • 電話や対面よりも、メールやチャットでの連絡を好む

新人とのコミュニケーションの取り方に困った時は、ぜひこれらのポイントを思い出して実践してみてください。

 

3:報告会で発表させる

OJTを実施した後は、報告会にてその成果を発表させることで、よりOJTの効果が得られるようになります。報告会の中では、たとえば「OJTを通して何を学んだか」「OJT前の研修から学んだことをどうOJTに活かしたか」「学んだことを今後にどう活かしたいか」などを発表させましょう。

また、報告会の効果については、中尾ゆうすけ氏が自身の著書で次のように述べています。

なお、報告会の日程は決まっていますから、決められた納期に向けたスケジュール管理、情報をまとめる力、チームワーク、プレゼンテーションなど、さまざまな力を総合的に発揮しなければ、報告はできません。つまり報告会は、教育内容のすべてがリンクされ、その集大成として発揮される場でもあるのです。

(引用:中尾ゆうすけ著(2010)『人材育成の教科書 自分で考え行動できる新入社員の育て方』こう書房)

報告会で発表をさせることは、単にOJTから学べることに留まらず、さまざまな能力を発揮させるチャンスとも言えるでしょう。OJTを実施した際には、ぜひ取り入れてみてください。

なお、効果的なOJTの実施方法についてはこちらの記事でもくわしく解説していますので、ぜひ参考にご覧ください。

■参考記事

OJTにおける効果的な指導方法とは?失敗例から学ぶ育成計画の立て方についても解説

 

まとめ

新人教育の一環として実施されることの多い「OJT」。今回は多くの調査結果をもとに、新人教育の課題点から、OJTの失敗ポイントや成功ポイントまで細かくご紹介いたしました。

とくに

「新人社員の社会人としての意識が足りないと感じる」

「新人社員とコミュニケーションを取るのが難しい」

「新人社員がなかなか悩みや本音をぶつけてくれない」

このように感じる方は、ぜひ、見出し「企業における新人教育の課題」および「新人教育のOJTで陥りがちな失敗」をご覧いただければと思います。

本サイトでは、他にも新人教育やOJTに役立つ記事を多数掲載しておりますので、ぜひ貴社の教育活動にご活用ください。