shouin+ブログ

人材育成とは?課題と解決策、目標設定の考え方などについて具体例を交えてわかりやすく解説!

作成者: 『shouin+ブログ』マーケティング担当|Aug 23, 2022 8:13:00 AM

「従業員の成長がみられない」「離職率が高くいつも人手不足だ」など、流通小売店における人材に関する企業の悩みは尽きず、なかなか解消されないものです。

これらの課題を解決するため、今注目されているのが「人材育成」です。人手不足という環境のなかで、働き方改革や多様な働き方の広がりなどによって、社内の働く状況が大きく変化しています。いま改めて人材育成を重要視し、再構築しようとする企業が増えています。

今回は、人材育成とはなにか、目的は、どのようなメリットがあるかについて解説し、人材育成の具体的な手法やポイントと導入している企業の事例を紹介します。

 

人材育成とは

人材育成とは何でしょうか。研修や教育をイメージされるかもしれませんが、人材育成の目的は社員の能力を引き出すことで、企業の目標達成や経営の成果につなげることです。

「宮川淳也著:『中小企業のための人事評価の教科書 制度構築から運用まで』総合法令出版」には、人材育成の真の目的は「社員の成長を後押しし、経営成果と業績向上につなげること」としています。

企業の目指す姿、戦略、目標に対してそれを後押しすることができるのか、が人材育成のポイントになります。自社にとって経営を後押ししていない人材育成方法であれば、見直しが必要だということです。



なぜ今、人材育成の重要性が高まっているのか

厚生労働省の報告書「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会報告書」によると、コロナ禍によって労働需要の構造が変化し、働く環境が大きく変わってきているといいます。そのなかで、人を育てるということの重要性がコロナ禍で高まっています。

 

1:人材確保のため

日本は今後ますます人口減少に伴って労働人口の人手不足が深刻になっていきます。

企業を支えるのは人材です。しかし優秀な人材を確保したいと思っていても、人材育成の仕組みがなく従業員のスキルアップの道が用意されていない企業は選ばれにくいといいます。キャリアアップできる企業でスキルを伸ばしていきたい人材にとって、人材育成に力を入れない企業は魅力がないのです。

良い人材を確保したいなら、従業員の育成ビジョンを提示しておくと効果的です。

 

2:企業競争力を高めるため

人手不足が加速するなか、企業の価値向上、競争力向上のためには従業員一人ひとりが戦力を上げて生産性を向上していくことが必要です。人材の数を確保しても、人材育成の仕組みが出来ていなければ生産性を上げることができず、また事業の停滞が続くようであれば優秀な人材は見切りをつけて辞めていってしまいます。

人材面で弱体化すれば、新しい人材を育成していくための時間や教育者も用意できず、企業全体の力が衰えていく可能性があります。



3:デジタル技術に対応していくため

厚生労働省の「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会報告書」では、新型コロナウイルス感染症の影響による「新たな日常」の下で、社会全体のデジタルトランスフォーメーション(以下「DX」という。)の加速化が促進されるものとみられる、とあります。

技術革新が進む中で必要になるデジタル技術を利活用できる人材が不足しており、その確保・育成が課題となっています。

報告書では、企業は技術革新の進展等に対応したデジタル技術を利活用できる人材を育成していくため、職業訓練プログラムの開発や職業訓練の提供、職業訓練分野におけるICT活用を図ることにより、労働市場における人材のリスキリング(再教育)やスキルアップの支援を強化することが重要だと指摘しています。

 

人材育成を行う目的

人材育成を行う目的は、主に以下の4点が挙げられます。

 

早期戦力化

新入社員を戦力として活用するためには、育成・教育が必要です。流通小売業や飲食店、病院や介護の現場などさまざまな職場において、新入社員の早期戦力化のためにOJT教育が行われています。

先輩や教育担当者に、業務体験を通して学ぶことで効率よくスキルや知識を習得することができます。効果的な人材育成を行うことで、教育を受ける側はしっかりと業務の意義とやり方が身につき、早期に戦力として業務に貢献することができます。



生産性の向上

人材育成の目的としてあげられるのが、企業全体における生産性の向上です。

厚生労働省の「平成 30 年版 労働経済の分析―働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について―」によると、企業が人材育成を行う目的を調査したところ、下図の通り81.9%の企業が従業員の生産性向上を求めていることが分かりました。

従業員の生産性が上がることで、企業全体の生産性や効率が向上します。人材育成に力をいれることによって、従業員一人ひとりのスキルアップが実現し、企業全体の戦力が強化されることになります。

参照元: 厚生労働省「平成 30 年版 労働経済の分析 ―働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について―

離職率の低下

独立行政法人 労働政策研究・研修機構 の「人材育成と能力開発の現状と課題」に関する調査 によると、従業員の働きがいについての調査結果で、育成の過程でOJT教育を受けた人が「満足している」「ある程度満足している」は60%に対して、OJT教育を受けていない人の満足度は40%でだったと述べています。

この調査結果から、現場での教育方法であるOJT教育を受けたことで、しっかりと人材育成の仕組みをつくって実践することで仕事の内容や意義を伝えることができ、新入社員の仕事への働きがいが高まっていることがわかります。業務にモチベーションや働きがいを感じられない職場は離職率が高くなります。

参照元:独立行政法人労働政策研究・研修機構「人材育成と能力開発の現状と課題に 関する調査(労働者調査)

リーダークラスの育成

企業経営を継続していくためには、現場を指導するリーダーの育成を欠かすことができません。

企業の代表だけでなく、チームリーダーや経営層といったポジションを任せられるような人材を育成します。

とくに、小規模の企業だと、人材も限られていることから、採用の段階から将来を見据えて育成する必要があります。



人材育成に本気で取り組むメリット

人材育成に取り組むには、企業全体で仕組みを構築していくため大変な労力がかかってきます。人材育成に取り組むことが、企業にとってどのようなメリットをもたらすのでしょうか。

1:適切な人材活用

人事部の経験や勘によって判断されていた配置には、思惑や思い込みが入ることによってミスマッチが生じてしまいます。従業員への評価や配置へのフィードバックにおいても納得性のある正当な理由は得られない可能性があります。

AIやビッグデータといったテクノロジーが進歩しているなかで、人材育成にこの技術を活用することで、客観的な意思決定を行うことができます。

従業員に関するデータや情報を集めて一元管理し、分析することで、客観的なデータを判断基準として採用や教育など一連の人材育成の場で活用することができます。

自分への適正について客観的なデータがあることで、従業員は現在のあるいは異動先の業務に従事することに対して理解が深まります。

 

2:企業競争力を高めるため

人材育成において、設定した目標に対する評価やフィードバックを受けることで、従業員は自分の課題や改善点など気づきを得ることができます。

適時の研修など新しい知識やスキルを得る機会が与えられれば、それを自分の業務に活かすことで効率が上がり、生産性が向上します。従業員のスキルアップはチームの生産性を押し上げ、ひいては企業の業績を引き上げます。

人材育成は、新人教育を行うだけのものではなく、長期的に従業員のスキルアップを図るもので、これが企業全体を成長・拡大に導くのです。

 

3:従業員エンゲージメントが高まる

従業員エンゲージメントが高い状態とは、「会社と従業員に強い信頼関係が構築されている」ことを示しています。

人材育成の仕組みを作り、評価基準を設定し、教育担当を設定し振り返り・フィードバックを繰り返し行うことで、自分が課題に対してどのように改善していけば良いのかがわかります。

会社の目標や指針に基づく、課題解決方法や指針が分かることで、業務への取り組み姿勢が変わってきます。できるようになると達成感を感じたり、自信を持ったりするようになり、やりがいや働きがいを持つようになります。

従業員が会社の目指す方向性に同意して、自発的に貢献したいと積極的に行動することで、従業員のエンゲージメントが高まり、結果として会社の業績向上にもつながります

 

人材育成が顧客満足度向上につながる?

人材育成することで、顧客満足度向上につながると言われますがどのようなことでしょうか。

顧客満足度とは「企業が提供する商品・サービス等に対して、お客様がどの程度満足しているか」を指しています。

人材育成と顧客満足度の関連については、1994年にハーバードビジネススクールの名誉教授、ジェームス・L・ヘスケットらによって発表された論文「サービス・プロフィット・チェーンの実践法(原題:Putting the Service-Profit Chain to Work)」に記述されています。

論文で提唱されているのが「サービス・プロフィット・チェーン(SPC)」という考え方です。

(参考情報:Putting the service-profit chain to work を参考に弊社で図を作成


SPCとは、「企業が従業員に対して働きやすい環境や十分な報酬を提供することで従業員満足度が向上し、従業員満足度が向上することで、顧客に対してのサービス品質が高まるので顧客満足度が向上し、顧客満足度が向上するということにつながる」というものです。

従業員に対する環境を整えることで、顧客満足度向上につながるプラスのスパイラルに乗ることができる、と指摘しています。



従業員満足度と顧客満足度の関連性

従業員満足度が高いと顧客満足度が高まるという関連性が見られています。

サービスの品質は、商品自体のクオリティとサービスのクオリティの2つに分解できますが、顧客満足度は、商品クオリティよりもサービスクオリティの方に強く影響されるといいます。

さらにサービスクオリティの中には店舗設備や店舗全体のサービス、接客サービスがありますが、中でも接客クオリティは顧客満足度に対して特に影響力が高いとされています。

顧客ロイヤリティを数値化したNPSの開発社であるベイン・アンド・カンパニーのWebメディアによると、従業員エンゲージメントの高い社員は企業に忠実で仕事に熱意をもって取り組んでいて、顧客満足を高める仕事をするということが実証されています。

従業員エンゲージメントの高い社員は、いかにして顧客に喜んでもらえるか創意工夫を重ねて、顧客満足度を上げるようなサービスをしようとします。このように従業員満足度の高い企業は顧客満足度が高いとされています。従業員エンゲージメントの高め方に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

■参考記事

従業員のエンゲージメントを高めるための向上施策とは?具体的な事例を交えてわかりやすく解説!




流通小売店の人材育成に関する課題と解決策

流通小売店において、人材育成に関する課題とはどのようなものがあるのか、またどのように解決していくとよいのかを5つのポイントにまとめました。

課題1:指導する時間が確保できない

1つ目の課題は、指導者が教えるための時間を確保できないという点です。

指導者は教えることの他に自分の業務があります。指導の時間を取っていても突発的な仕事が入ることもありますし、納期が差し迫っている場合には業務を優先しなければなりません。

解決策として、指導者が教育に時間が割けない時でも、教育を受ける側が自主学習できるようにeラーニングを取り入れる方法があります。これなら時間を無駄にすることなく効率的に人材育成を進めることができます。

 

課題2:戦力化に時間がかかっている

2つ目の課題には、戦力化に時間がかかっているということがあります。戦力化とは現場で実際に仕事を任せられるレベルに教育することです。机上で学んだだけでは身につけることができません。また必要な知識がないままに実践の場に出ても理解することが難しいものです。

解決策として、早期に戦力化できるようにOJT前に知識習得の時間を設けることで、教育を効率化することができます。

レストラン経営における飲食事業、及び食を中心に生まれるホスピタリティの提案、提供事業を行う株式会社きちりホールディングスでは、従業員が2000名を超えていて、人材育成に関して教育担当者不足と教え方のばらつきが大きな課題でした。

動画視聴によって学ぶことができるeラーニングを取り入れたことで、現場のOJT教育にかかる時間が半減した、また教育内容が均一化されるという効果を得られています。

 

課題3:指導者ごとにばらつきが生じてしまっている

3つ目の課題は、指導する側の能力にばらつきがあるという点です。

指導者にも求められるスキルがあります。新人などの教育を受ける側とのスムーズなコミュニケーションスキルが求められますし、ほかにも褒めるスキル、叱るスキル、フィードバックスキルなども必要になります。

この指導者のスキルのばらつきがあると、良い教育を受ける人と不遇な人が出てきます。学びにくさのある環境で教育を受けたために、やりがいを感じられずに退職してしまうケースもあります。

解決策として、マニュアル化を徹底する、教えるコンテンツをeラーニングに集約し、そこを見て学べるように教育内容を統一することなどがあります。

 

課題4:育成状況を可視化できていない

4つ目の課題には、上長が育成の進捗がどこまで進んでいるのかを可視化できていないことが挙げられます。教育担当者の報告が滞ってしまうと、教育メニューの内容が網羅されたのか、進みが遅いのかなど新入社員個々の状況が掴めず、全体状況を確認が難しくなってしまいます。

解決策として、eラーニングを活用して、学習状況を可視化することが有効です。上長はいつでも指導・教育がどこまで進んでいるのかを把握することができます。

 

課題5:内定者との接点を継続できない

5つ目の課題は、入社までの期間に内定者との接点を継続できない点です。

せっかく良い人材を確保できたとしても、入社までには時間があります。その間に心変わりをされて他の企業を選ばれてしまっては会社として大損害となります。内定者が入社するまでの時間を人材育成のために有効に利用したいものです。

解決策として、eラーニングやWEB会議ツールを用いてオンラインで内定者研修を実施する、という方法があります。こちらに関しては、後述するユナイテッドアローズの事例でご紹介します。

 

具体的な人材育成の手法

人材育成にはさまざまな手法があります。それぞれの手法について紹介し、メリットとデメリットを解説します。

 

集合研修

集合研修とは、大勢の受講者が同じ場所に集まり講師が対面で講習を行う形式の研修です。大勢の受講者に対して同じことを教えるという場合に適した教育方法で、一般的な研修のスタイルです。

同じ内容を受講する点で教育が均一化されることは機会平等となりメリットといえます。デメリットとしては会場までの時間や交通費などコストが発生することです。

 

OJT

OJTとは、「On the Job Training」の略称です。主に新入社員が座学で習得した知識を現場で実践しながら学び、現場で活躍するための教育手法のひとつです。

厚生労働省の労働白書「能力開発の現状と課題」によると、日本の企業の約95%が業務の指導においてなんらかのOJTを実施しているといいます。OJT教育は人材育成において効果的な教育方法であるといえます。

メリットとしては所属する職場の作業を通した研修となるので習得したことがそのまま生かされる点です。デメリットとしては現場で教育する担当者の負荷が大きいことで、チーム全体の業務効率に影響を与える可能性が挙げられます。OJTの基本に関しては以下の記事で詳しく解説しています。

■参考記事

OJTとは?実施時の注意点や必要な準備についてわかりやすく解説!

OJTにおける効果的な指導方法とは?失敗例から学ぶ育成計画の立て方についても解説

 

Off-JT

OFF-JTとは「OFF-the-Job Training」の略称です。現場ではない場所で行われる研修を指しています。

前述した「能力開発の現状と課題」によると、OFF-JTとは「通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練(研修)のことをいい、例えば、社内で実施(労働者を1か所に集合させて実施する集合訓練など)や、社外で実施(業界団体や民間の教育訓練機関など社外の機関が実施する教育訓練に労働者を派遣することなど)が、これに含まれる」とされています。

OFF-JTは実際の業務をする場所から離れて業務に必要な知識や技能を習得する教育方法で、OJTは現場の業務に取り組み実践的に学び、現場で活躍できるスキルを得ていく教育方法です。

各分野の専門家による研修を受けることで一流のノウハウが得られる、一度に大勢に対して研修が可能である、というメリットがあります。一方で、外部講師費用や交通費などコストがかかる点、研修管理者の負担が大きい点がデメリットとされています。ですが、近年では後述するeラーニングや学習ツールの普及により、手間をかけることなく、効果的な研修を行うことが可能になってきています。Off-JTの基本に関しては、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

■参考記事

Off-JTとは?実施するメリットや方法を事例からわかりやすく解説!

OJTとOFF-JTの違いとは?それぞれのメリット・デメリット、活用方法について解説

 

eラーニング

eラーニングとは、インターネットを活用してパソコンなどのデバイスを用いて行う学習形態を指します。受講者が場所や時間を問わずに自分のペースで学習を進めることができる、繰り返し学習できるという特徴があります。

パソコン以外にもタブレットやスマートフォンでの受講も可能になっているなど、eラーニングは進化しています。近年ではweb会議ツールを用いてリアルタイム性の高い研修を行う企業も増えており、Off-JTの置き換えだけでなく、集合研修も置き換えている企業が増えています。

メリットとして、時間や場所にとらわれずに育成できること、教育担当者の負担を減らせることなどがあります。デメリットとしては自社向けにカスタマイズしていくことで、マニュアルや教材の作成コストが増大する点、受講者がどれだけ集中して取り組んでいるかが測りにくい点が挙げられます。活用されているか、効果があるかどうかを正しく分析できるツールの導入をお勧めします。eラーニングのメリット・デメリットや活用方法教材の内製化に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

■参考記事

eラーニングとは?メリット・デメリットから企業研修での効果的な活用方法までわかりやすく解説!

eラーニングの教材は自社で作成できる?内製のメリットと作成方法をわかりやすく解説!

eラーニングのメリット・デメリットとは?教育・研修を効率化するクラウドサービス事例をもとにわかりやすく解説!



階層別研修

階層別研修は、社内の階層に応じて実施される研修です。昇進などによって立場・役職・役割が変わる節目で行う成長機会の場であるといえます。厚生労働省の資料によれば、役員やマネジメント層向けの「経営学研修」や支店長・部長クラス向けの「上級管理職研修会」、中堅リーダーに対する「リーダー研修会」、新人に対する「新入社員研修会」などがあり、ステップに応じて必要な知識を学ぶものです。

メリットは人材それぞれの立場に必要なスキルやノウハウをブラッシュアップできることです。デメリットとしては階層が高くなるにつれ、研修のレベルが高まるため講習料金が高額になる傾向があり、コストがかかることです。

 

人材育成計画の立て方

人材育成計画はどのように立てていけば良いのでしょうか。

1:現状を把握する

現状を把握することが、人材育成の第一歩となります。各部門が業務を振り返り、現在直面している課題を抽出することから始めます。

そのため誰がどの業務をしているのかを、正しく把握する必要があります。現状の把握ができ、課題が浮き彫りになったら、それぞれの課題を取り除き、生産性や効率性を上げる方法を考えていきます。また、それぞれの業務ポジションに適切なスキルの持ち主を配置しているかを確認するのも大切です。

現状の把握のために大切なのは、現場の声を拾っていくことです。課題がある場合、現場で働く人が一番悩んでいます。現場に携わる従業員の意見をヒアリングし、まとめましょう。



2:必要な人材像を明確にする

企業にはどのように拡大していくか、成長の理想像があります。どのような企業になりたいのか具体的に目指す姿を練り上げて、明文化しましょう。

固まった企業のあるべき姿と現状を比較してみると、理想とのギャップが見えてきます。人材育成の方向性は、理想と現実のギャップを埋めるために必要な人材像をイメージすることではっきりしてきます。

人材育成には計画性が重要です。「現場を統括できるリーダーを3年で10名生み出す」などのように、企業における人材育成の目標を設定しましょう。



3:段階的に目標を設定する

従業員のキャリアまたは役職ごとに、求められるスキルを時系列に表にまとめたものが「スキルマップ」です。スキルマップはいつまでに何ができていればいいのか、人材育成を段階的に行うためのステップを定義しているため、人材育成の全体像が分かりやすく、従業員の現状に即した育成を行いやすくなります。

スキルマップと照らし合わせると「この入社3年までにこのレベルのスキルを身につけてほしい」という目安が分かるとともに、過不足も見つかりやすいのです。スキルマップによって育成の効率性が上がり、従業員の成長スピードも速まります。目標設定を行う上での注意点やMBOの活用に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

■参考記事

MBOとは?言葉の意味、目標設定の方法、効果的な運用管理のポイントなどわかりやすく解説!

 

4:社員を評価する

人材育成はただ進めていくだけでは、効率が上がりません。教育担当者がひとりで設計した育成カリキュラムを続けていても、うまくいかないものです。人材育成は全社共通の評価基準が設定されていなければいけません。

人材育成においては、必ず成果を見て評価し、フィードバックを行います。目標はどれほど達成しているか、必要なスキルは向上しているか、チーム全体に貢献しているかなどの評価ポイントにおいて確認し、評価する点と改善点を取り上げます。

評価においては、2つの基準「定量」と「定性」の両方で設定します。

定量とは、数値化できる評価項目のことで、テスト結果のように数字でレベルを示すものです。営業なら売上実績や獲得件数などが定量的な基準になります。

定性での評価とは、勤務態度や仕事に対する取組み姿勢や積極性、協力姿勢などのように業務上必要な資質であってもなかなかその実績を数値化できないものをいいます。定性的な基準も持ちながら評価していく必要があります。人事評価制度の構築に関する基本的な内容は、以下の記事で詳しく解説しています。

■参考記事

人事評価制度とは?目標設定するための項目や基準の作り方を事例を交えてわかりやすく解説!



階層別人材育成のポイント

企業にはさまざまな立場、勤続年数や役職をもった従業員がいます。階層別に人材育成を行う目的は、それぞれの立場において企業が期待する役割を自覚してもらい、必要なスキルやマインドを習得してもらうことです。ここではそれぞれの階層における人材育成のポイントについて見ていきましょう。

アルバイト

人手不足が深刻な中、アルバイトは重要な戦力といえます。

アルバイトの人材育成においては、任せたい仕事を決めて、研修スケジュールを組み、マニュアルを作成しておき、フォロー担当をつけて教育体制を整えておきます。教えていくあいだ、定期的に振り返りの時間を持つと良いです。良かった点と悪かった点についてフィードバックします。

厚生労働省の報告書「人材育成の現状と課題」によると、正社員に比べると非正規雇用者は、能力開発の機会が乏しいと指摘しています。計画的な面談の機会や目標管理制度などによる動機づけのような点で正社員に与えられる育成のチャンスが少ないといいます。

アルバイトの人材育成についても丁寧に行うことで離職率が下がり、安定した戦力となります。

(参照:厚生労働省の報告書「人材育成の現状と課題」)

 

新入社員

新入社員の中には、学生生活との意識が切り替わっていないという人もいます。

まずは社会人として必要なマナーや基礎知識を身につけさせる研修で教育し自覚を持たせます。

企業で働くにあたって、企業理念や経営方針など、自社について理解を深める研修もあります。社会人として、自社の社員としての心構えができた上で、配属先での必要なスキル習得の研修などがあります。新入社員の研修に関しては、以下の記事が詳しく書かれていて参考になります。

■参考記事

新入社員研修とは?目的や手法、カリキュラム設計の流れを事例からわかりやすく解説!



中堅社員

中堅社員の定義は企業によって位置づけが変わりますが、おおよそ入社5年経ち主体的に業務に取り組むことができる社員を中堅社員といいます。

中堅社員を対象として行われる研修の目的は企業によって異なりますが、一般的には業務のレベルアップが求められています。また新入社員や後輩に対して、業務遂行のための適切なアドバイスを行う、あるいは必要なスキルや知識を指導できるようになることも研修の目的とされています。

 

リーダークラス

リーダークラスは、チームリーダーとして積極的にメンバーとコミュニケーションを取りながらチームをまとめ、チームの全体の目標達成や生産性の向上や業務の効率化を実践することが求められます。

リーダークラスの研修では「リーダーとして求められる役割を認識する」「上司をサポートしチームの成果を高める」「部や課における中核として後輩の指導や支援を行う」などを目的とした内容が設定されています。



中間管理職

課長や係長など組織の中間のポジションにいるのが中間管理職です。

新しく中間管理職なった人への研修は「管理職としての管理能力の向上」「管理職としての心構え」などがあります。それ以外の管理職の人へは「組織マネジメント」「施策の立案や実行」など管理職としての実践面を強化する研修があります。

部長になれば経営を意識した研修が行われます。外部研修でさまざまなリーダーの経営スキルやノウハウを学び、広い視野を得てグローバルな基準を取り込ませることによって社内を活性化させます。




人材育成を成功させるポイント

人材育成を成功させるためにはどうすればよいのでしょうか。ここでは人材育成のポイントを4つ取り上げます。

 

ポイント1:業務の意義を認識させる

業務そのものの意義をしっかりと理解してもらうことが大事です。

作業の工程を説明して、やり方が分かったとしても、その作業は何のために行っているのかがわからないと、やる気が起こりにくいものです。自分の携わる作業が意味を持っていることを伝えることで、集中力も高まります。

 

ポイント2:タスクを細分化する

はじめから大きなタスクを与えるのではなく、業務を細分化して実践しやすくすることが大切です。一度に複数のことを覚えることは難しいものです。タスクが細分化されていれば一つひとつの作業を覚えやすくなりますし、質問しやすくなります。そして、タスクをひとつ習得するたびに達成感を得ることができます。

 

ポイント3:適切なフィードバックを行う

適切なタイミングでフィードバックを行うことは、人材育成とってとても重要です。

教えっぱなしでフィードバックがない状態では、新人はこれで良いのかダメなのかが判断できず不安になります。良かった点はどこが良かったのか、改善すべき点はどのようにすれば良いのか、改善案を提示しましょう。フィードバックを効果的に行う方法や具体的な実行に移すためのフレームワークに関しては、以下の記事が参考になります。

■参考記事

フィードバックとは?言葉の意味や有効なフレームワークについてわかりやすく解説!

 

ポイント4:Z世代に合わせた人材育成を行う

Z世代とは、1990年台後半〜2012年ごろまでに生まれた世代を指す言葉です。近年、Z世代が社会に進出し始めており、これからの経済活動の中心となっていく世代です。

どの世代も生まれ育った環境に影響されていますが、生まれた時からソーシャルメディアや高度なIT技術に囲まれて触れてきたZ世代には、これまでの世代とは違う特徴があります。Z世代に関する基本的な内容は、以下の記事で詳しく解説しています。

■参考記事

Z世代とは何歳から?特徴やこれまでの世代との違い、効果的な研修方法についてわかりやすく解説!

 

1:自分らしさ・個性を認めて欲しい

大多数はこうだ、といった一般論はひびかない傾向があります。こうすべきだと決めつけた説明ではなく、被教育者個人に対して、「〇〇さんならこうするといい」というように説明すると納得してもらいやすいです。

2:効率性を重視する

Z世代には、無駄を嫌い業務も効率性を大切に考える傾向があります。これは何のためにする作業なのか、が明確にあると取りかかりやすいのですが、必要性を感じないことは無駄だと感じます。たとえば、議題もなく惰性で行われるような定例会議や業務時間外の職場の飲み会などは好まれない可能性が高くなります。

3:承認欲求が強い

自分が他人にどう思われているのか周りからの評価が気になる、また認められたいという気持ちが強い傾向があります。

4:世代を超えてオープンでフラットな関係を好む

SNSなどで、国や性別や年齢を超えたコミュニケーションを取っている世代であることから、世代を超えて同等なオープンな関係性を好みます。上の世代の上司や先輩から上下関係を強いられるのは苦手な世代だといえます。

人材育成においても、上記の特徴を認識したうえで接していくことが望まれます。

 

人材育成の成功事例

人材育成にすでに取り組んでいる企業があります。今回は3つの企業の人材育成成功事例をご紹介します。

事例1:株式会社ユナイテッドアローズ(アパレル)

ユナイテッドアローズは、国内外のデザイナーズブランドとオリジナル企画の紳士服・婦人服および雑貨等の商品を販売するセレクトショップを展開しています。

当社は、内定を出してから入社するまでの期間を有効活用するために、内定者研修、新入社員研修をeラーニングを用いてオンライン上で実施しました。

内定している新入社員との内定期間のコミュニケーションや社内で早期育成に関しての課題があったことから、以下の条件に合うツールを検討し、クラウド型eラーニングプラットフォーム「shouin+(ショウインプラス)」の利用を開始しました。

  1. 遠隔で操作できる
  2. 相互にコミュニケーションがとれる機能がある
  3. 動画配信の操作が簡単である 

直近では、shouin+で研修を実施することで、利用していなかった時と比較して、研修目標に到達した達成者の数が2.5倍になったという結果も出ています。詳しいユナイテッドアローズの事例は以下でご紹介していますので、ぜひご覧ください。

■詳細な事例はこちら

目標達成者数を2.5倍に!フルリモート化で効果を高めたUAの研修とは?(株式会社ユナイテッドアローズ)

 

事例2:株式会社ミュゼプラチナム(美容・エステ)

株式会社ミュゼプラチナムは、美容脱毛事業を全国で展開しています。

スタッフは採用後、店舗と本社合わせて5週間の研修新人研修を受けますが日々の日報を紙で書いていたため、本社で即時に可視化することができないという課題がありました。

また本社スタッフからは新人の様子を伺うことができないためフォローが難しかったという面もありました。

eラーニングツールを取り入れたことによって、課題であった新人の日報を店舗も本社も共有でき、本社からも新人に対してコメントするようにしました。

このことで本社からも新人教育を可視化できるようになりました。新人にとっては本社からもフォローされているという安心感がモチベーションにつながるという効果も見られています。

適切なツールを活用して新人の育成に対して細かなフォローを実現しています。

■詳細な事例はこちら

研修期間中の新人スタッフの様子を日報で把握!モチベーションアップやメンタルフォローを実現。(株式会社ミュゼプラチナム)

 

まとめ

企業において成長のカギを握るのが人材育成です。人材育成の着手に取りかかることが急務ですし、すでに人材育成を取り入れている企業においてもテクノロジーの進化や働き方の多様化、またコロナ禍によって企業の目指す姿やビジネスモデルに変化が見られる中、人材育成の内容もブラッシュアップさせる必要があります。自社に適した人材育成を実践していくことが大切です。

何かお困りの際は、ぜひshouin+にご相談くださいませ。